第28話 川の字
夕飯を済ませた後、布団を持ってきて敷くと川は隠れてしまった。
「美久理さん、これ凄いんですよ」と僕はちゃぶ台の下のコントローラーを持って、ちゃぶ台を動かす。
「姫香さんが作ったんですよ、これも」
僕は自分のことのように誇る。
「凄いですね」と美久理さんは姫香さんを見た。
「大したことじゃないよ。大学でロボットの勉強してたから、それ使っただけ」
「そういえば姫香さんって大学生でしたね」
そんなことを聞いたはずだったのだが、忘れていた。
「大学ってまだ休みなんですか? 行ってるところ見ないんですけど」と僕は聞いた。
僕が来てから、姫香さんは一度も大学に行っていないはずだ。
いつもこの部屋にいて、外出するとしたら祖母の手伝いで出かける時だけだ。
「いや、最近さっぱり行ってない。サボりだね」
姫香さんは少しだけ恥ずかしそうに言った。
「晴子さんの手伝いしたり、この部屋で作りたい物作ったりしてると、大学行く気になれなくてね。だからたぶんやめちゃうと思う」
「こんな大きな龍作ってたら、学校に行く時間なんてないですよね」
僕がそう言うと、そうそう、と姫香さんは頷いた。
そして姫香さんは龍や動くちゃぶ台や、液晶画面の付いた柱について、美久理さんに語り出した。
液晶を埋め込んだ柱は、元々は水槽を埋め込むつもりだったが、魚の世話が面倒なので映像にした。
実物じゃないからサメでも何でも住ませることができるし、こっちにして正解だった。
そんなふうに姫香さんは語る。
作品について説明することがなくなり、僕が欠伸をすると、寝ようと美久理さんは言った。
「早起きしたら、いい写真が撮れるかもしれませんし」
そうだね、と姫香さんは僕たちを布団の中に入らせ、明かりを消す。
並べられた布団の、真ん中の布団で僕は眠る。
目が覚めた時、姫香さんの掛け布団は縦に二つ折りにされたようになっていて、姫香さんの左半身には布団がかかっていなかった。
姫香さんだけ寝相が悪くてそうなっていた。
それを見て僕はなんだかほっとする。
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