第17話 祖父母の家、祖母の手紙
僕が栗原さんを連れて帰ると、祖母も祖父もやけにテンションを上げた。
「まだ入学して一ヶ月も経ってないのに、早いわねえ」
「別にそういうのじゃないです」
僕が否定すると、祖母はくっくと笑う。
「わかってるわよ、そのくらい」と祖母は言う。
「この人が芸術家の?」
小声で栗原さんは僕に聞く。
僕は頷いた。
「大した芸術家じゃないわよ。それっぽいことをしてるだけ」
「お茶入れてくるね。紅茶、何か入れる?」
祖父が栗原さんに聞く。
「あ、じゃあ砂糖を」
「わかった。砂糖ね」
小走りで祖父は台所に行く。
「こちら、栗原さん。おばあちゃんに用事があるんだ」と僕は栗原さんを紹介した。
「私に?」
「写真を撮ってほしいんです」
祖母は僕たちの言いたいことを理解しかねて、困惑した顔になる。
「色々事情があるんだよ。まずそれから話すよ」
僕は祖母にそう言ってから、
「いいよね?」と栗原さんに聞いた。
勿論、と栗原さんは頷く。
栗原さんは居間で祖父のいれた紅茶を飲みつつ、僕に話したようなことを祖母に話した。
聞いていた祖母は少し考えてから、
「私はちょっと忙しいのよ」と言った。
「でも私の弟子なら使ってもいいわ。芸術的とまではいかないけれど、勉強はしていたから、ちゃんとした写真は撮れるはずよ」
姫香さんが撮るというのは、半ば他人事である僕にとっては面白そうなことだった。
当人にとってはどうなのだろうと思って僕は、どうします、と栗原さんに聞く。
「是非、よろしくお願いします」
栗原さんは祖母に頭を下げた。
「じゃあ、少し待っていてね。姫香ちゃんにお手紙を書くから」
祖母は腰を上げて、隣の部屋に行く。
そして万年筆や便箋を持って戻ってくると、便箋に読みやすい綺麗で丁寧な字を書いた。
書き終わるとそれを折って白い封筒に入れると、その封筒を僕に渡した。
「たぶん今日も部屋で作業してると思うわ。晴道君、後はよろしくね」
「うん」
僕は飲みかけだった紅茶を一気に飲み干す。
そして栗原さんを二階に案内する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます