取材メモ⑧:帰りも油断大敵っす!

 神聖歴六一〇三年・皋竜こうりゅうの月第八日・天気:晴


 パンパカパーン♪ ついにダンジョンを脱出した白猫アイナちゃんっすよぉ~!

 う~ん、外の空気の素晴らしさよ! ここまで本当に苦労したっす。

 冒険者には頭が下がるっすねぇ。今回の取材を通して心底そう思うっす……。命がいくつあっても足りないっすよ? いや、割と本気で……。


 荷物を整理したら王都を目指して出発っす。

 ゆっくり休むのは無事に帰還してから……。冒険は帰るまでが冒険っすよ!

 実際、冒険者の死亡率は帰還時が全体の二番目ぐらいに高いっすからね。

 やっぱり依頼を終えた達成感と拠点に戻れる安心感で油断しちゃうんっすよ。昨日、身をもって経験したのでよく分かるっす……反省、反省。


 ちなみにダントツの死亡率一位は魔物などの討伐依頼を遂行しているときっす。これはベテラン冒険者や新米冒険者に関係なくって感じっすね……。

 少しでも気を抜けば死に直結する……それが魔物の討伐依頼っす。

 

 うん……こうして思うと冒険者ってすっごく大変な職業っすね!

 アイナちゃん、もし転職することがあっても絶対にならないっすよ!

 パン屋とかで細々と平和に暮らすっす……。

 

 とか考えつつ森を進んでいたら、急にその歩みを止めるナメークハンターズ一行。

 えっと? どうしたんすか? そしてなぜ空気が微妙にピリピリしてるっす!?

 得物に手を添え周囲を警戒するパーティに戸惑っていると、合図をしたらニコさんと二人でソシオの後ろに隠れてくださいね、とリーダーさん。

 

 意味をはかりかねていると突然、森の木々をなぎ倒して現れる巨大な影……額に角を生やした赤熊、コルヌウルスっす!

 ちょっ!? この森にこんな魔物がいるとかアタシ聞いてない!

 ハッ! さては調査部の連中やらかしたっすね!? このクラスの魔物が報告に上がってこないとかあり得ないっすよ! 


 って、違う、違う! 退避! 退避っすよ!

 その熊、見た目以上にヤバいんっすから!

 ワイバーンと殴り合えるって言えば、どれだけ危険か分かるっすよね!?


 しかし、逃げるのは無理と判断したのか戦闘を開始するリーダーさんたち。

 うぅ……もうこれは皆さんの勝利を信じて神に祈るしかないっす……。

 なんて思ってたんっすけど……。あれ? 割と余裕そうっすよ?

 

 サマラさんが神術の防御障壁で足止めし、ルイナさんは矢で動きを牽制。

 その隙にリーダーさんとルルさんが的確に攻撃を加え、怯んだところをノアさんが大火力の魔術でズドンッ……。


 数分後、地面に倒れ込むコルヌウルス。

 これがナメークハンターズの真の実力っすか……。

 ダンジョン探索時はまだまだ本気じゃなかったんすね。

 道理で王都の高級住宅街を拠点にすることができるわけっすよ。


 うん、それはそれとして誰か手を貸してくれないっすか?

 アイナちゃん、腰が抜けて動けないんっすけども!


 経理への申告用メモ

 特になし。

――――――――

 前日からの合計:金貨1枚、銀貨19枚、銅貨27枚


 夕食は討伐したばかりの熊肉! ちょっと独特の臭みがあったっすけど、慣れるとクセになる美味しさだったっす。

 さて、明日はいよいよ王都に帰還……この取材もあと少しで終わりっすねぇ……。(´・ω・`)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る