取材メモ③:天然ひとたらし?

 神聖歴六一〇三年・皋竜こうりゅうの月第三日・天気:晴


 おはようございます……絶賛二日酔いの白猫アイナちゃんっすよぉ~。

 うぅ、頭痛い。ただ、体調は最悪っすけど仕事へ行かねば……。

 頑張れ、アタシ! アイナちゃんはやればできる子っす!


 支度を終えたら、重い足取りで冒険者ギルドへ。

 およ? 今日はまだ来てないっすねぇ、ナメークハンターズの皆さん。しょうがない、昨日の取材メモでもまとめながら暫く待つっすかねぇ。

 でも、あのヌメヌメの悲惨な状況を思い出すとなんだか吐き気が……。

 うぇっぷ……あ、これ無理。またあとでやるっすよぉ……パタリッ。


 力尽きてテーブルの上に突っ伏していると、おはようございます! というか大丈夫なのです? と聞き覚えのある声が……。

 顔を上げると、ナメークハンターズのリーダーさんが心配そうにアタシを見つめていたっす……。

 これはお恥ずかしい……、大丈夫っすよぉ、ただの二日酔いっすから~。

 って、なにを素直に告白してるんっすか、アタシ!? 今から取材なのに!

 うぁ~ん……アイナちゃんの馬鹿、馬鹿! 流石に失礼っすよぉ!


 しかし、二日酔いまで取材するなんて流石はギルドの広報職員さんなのです! と目を輝かせるリーダーさん。

 冒険者にお酒はつきものですからね! って……あ、あれ? どうしてアタシは褒められてるんっすかねぇ?

 なんて困惑していると、いつの間にやら話はリーダーさんのお酒に関する失敗談に……おぉ! これは面白そう! 急いでメモの準備っす!


 耳を傾けること十数分……うん、意外とやらかしてるっすよ、この子!?

 たびたび酒場で酔い潰れてそのまま朝を迎えてたりとか……まったく、よく今まで無事だったっすねぇ……。普通は襲われてるっすよぉ……。

 でも、リーダーさんを周りがこっそり見守っている貴重なエピソードだったっすねぇ……本人は無自覚なのがアレっすけども……。


 話が終わったあとは、本日の依頼である薬草採取のために森へ。

 メンバーはリーダーさん、ノアさん、ルルさんにアタシ。

 Cランク冒険者には少々不釣り合いな仕事っすけど、普段から採取系の依頼を中心に活動しているんだとか……。

 安全第一です! って、いやいや……それは冒険者としてどうなんっすか?

 

 ただ、この子が危険な討伐依頼を受注するのも、なんだか非常に心配になるっすけども……。

 ハッ! もしや他の人も今のアタシと同じ気持ちなのでは!?

 おおぅ……なんすかねぇ、この子……天然ひとたらし?

 

 夕方。無事に王都へ帰還っすよぉ~。

 雨が降っていたらナメークが狩れたんですけどね……って、残念そうに呟かないでほしいっすよリーダーさん。もうナメークはお断りっす! 絶対っすからね!

 思わず慌てると、面白そうに笑い返されたっす……まったく、この人は!

 

 でも、ここ数日の取材で少し距離が縮まった気がするっすねぇ~。

 明日も頑張るっすよ!


 経理への申告用メモ

 銅貨:20枚(食費:リーダーさんお勧め食堂の取材)

――――――――

 前日からの合計:金貨1枚、銀貨15枚、銅貨27枚


 この店の鱗牛のステーキ美味しいっす! 経費で落ちると考えたらなおさら! 教えてくれたリーダーさんに感謝っすねぇ。٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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