355日目:ダンジョンで油断は禁物。

 神聖歴六一〇三年・月兎の月第三日・天気:―


 セーヴェル遺跡ダンジョン第五階層を突破し、今日は第四階層を移動中です。

 このまま順調に進めば、あと数日でダンジョンを脱出できるかもしれません。


 ふふっ……探索を開始して三十日目……ようやく終わりが近付いてきました。

 干し肉や乾燥野菜、焼き固めたパンばかりの食事とももう少しでお別れです。

 あぁ、柔らかいお肉が食べたい、お風呂に入ってふかふかベッドで眠りたい。

 ……よし。なんだかやる気が出てきました! 出口までもうひと頑張りです!

 なんて王都へ戻ったあとのことに思いを巡らせながら、第四階層を進みます。


 数時間後……第三階層へ続く階段が通路の先に見えてきました。

 意外と早く辿り着きましたね。やはり第五階層より上は楽々です。

 ……けれど、続く第三階層は少しだけ注意が必要かもしれません。


 階段を上った先の大広間……そこはあの大百足ガーゴイルがいた場所です。

 第四階層へ下りる時、確実に討伐したはずですが……大丈夫でしょうか?

 あれから既に十八日……まさかあの状態から再生していたりしませんよね?

 う~ん……あり得ないとは思いますが、一応注意して階段を上りましょう。


 というわけで戦闘準備を整え、いざ第三階層大広間へ!

 まずは入口から天井を確認……うん、大百足の彫刻は影も形もありません。

 床は以前戦闘した時のまま岩が、大百足ガーゴイルの一部が転がっています。

 ふむ……やっぱり心配し過ぎでしたかね? まぁ、中に入ってみましょう。


 そうして警戒は解かずに、大広間の中へ。

 周囲へ気を配りつつ進むと……ヌチャッ、と背後の岩陰から物音が……。

 慌てて振り返ると、そこには灰色の体色をしたナメーク達がいました。

 大きさは片手で掴める程度……今まで遭遇した中でもかなり小型です。

 ……こんなところでなにをやっているんでしょう? 気になりますね。

 よし……大広間も安全そうですし、休憩ついでに少し観察してみましょう。


 それから暫く様子を見ていると、驚くべきことが分かりました。

 このナメーク達、周囲にある岩を、大百足ガーゴイルの残骸を食べてます!

 少しずつ、少しずつ、あの岩を嘗め溶かして吸収しているみたいです……。


 その事実が発覚した瞬間、私は全身から血の気が引く思いがしました。

 だって、よく見るとこの部屋のあちこちに灰色ナメークがいるんです!

 そして、気が付けば段々と私達に近付いてきているような気がします。


 これは……もし一斉に襲ってこられたら非常に不味いです。

 あの硬い岩を溶かせるなら、鎧なんか一溜りもありません。

 どんなに小さなナメークでもやはり油断してはダメですね……。

 ……よし、合図をしたら全員で一斉に出口へ向かって走りますよ!


 その後、どうにか大広間を脱出することができました。

 はぁ……もう少しで危ないところでした……。

 ……残り三階層。最後まで気を抜かずに進まないと。

 ここは危険なダンジョン……そのことを忘れてはいけません。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚

     古い金貨10枚


 (;´▽`A`` 少しだけ油断してしまいました……。

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