351日目:再び牙をむく――。
神聖歴六一〇三年・
ふふっ……セーヴェル遺跡ダンジョンに進入して二十六日目。
第七階層を突破し、ついに……ついに第六階層へ戻ってきましたよ!
一時はどうなるかと思いましたが、意外となんとかなるものですね。
そして、ここを抜ければ残るは比較的簡単な第五階層から第一階層のみ!
あともう一息です! 地上を……王都を目指して頑張りましょう!
そう皆で励まし合いながら、暗い通路を光苔の明りと松明を頼りに進みます。
けど、あの絶望的な状況からここまで、よく無事に辿り着きましたね、私達。
冒険者パーティ・リコルヌの皆さんのお陰もありますが、かなり奇跡的です。
運が悪ければ今頃、誰かが欠けていてもおかしくはなかったんですから……。
なんて考えながら歩いていると、もう第五階層へ続く階段が見えてきました。
意外と早く着きましたね。まだ少し時間がかかると思っていたのに……。
魔物との戦闘もありませんでしたし、ちょっと順調過ぎて恐いほどです……。
そうして不安を感じつつも階段へ一歩踏み出した瞬間、カチッ、と不吉な音が。
思わず足元へ目を向けると、私がなにかの仕掛けを踏んでいるようでした……。
それに気付き咄嗟に叫ぼうとしますがすでに遅く、足元を襲う絶望的な浮遊感。
この感覚……確認するまでもなく、前回と同じあの罠です! あの落し穴です!
しかし、それが分かっても対処する術はなく……私達は再び奈落の底へ――。
と、諦めて覚悟を決めたんですが、なぜかいつまでも落下しません。
あれ? 私……もしかして浮かんでますか? え? でもどうしてです?
不可解な状況に驚き周囲を見渡そうとすると、動かないで! とノアさん。
そのあまりに切羽詰まった余裕のない声に、私は思わず動きを止めます。
それから数分後、罠が起動を終え、再び足元に地面が現れました。
……すると浮いていた私達も、ストンッと床の上に落下します。
状況が飲み込めず困惑していると後方で、ノア!? と悲鳴を上げるルイナさん。
驚いて振り返ると、ぐったりとしたノアさんがルイナさんに支えられていました。
皆で慌てて駆け寄ると、大丈夫、大丈夫だから……、と弱々しく微笑むノアさん。
その姿から私達は全てを察します……あの瞬間、ノアさんが助けてくれたんです。
でも、ソシオを含めパーティ全員を浮遊させるのは相当な負担だったんでしょう。
うぅ……私が油断しなければ……本当、私はノアさんに迷惑をかけてばかりです。
俯き自分の愚かさに泣きそうになっていると、そっと誰かが頭を撫でてくれます。
顔を上げると心配した様子でこちらを見つめるノアさんの姿がありました……。
もう……こんな時まで私に気を使わないでください……本当に泣いてしまいます。
よし、ノアさんをゆっくり休ませるために早く第五階層大広間へ移動しましょう。
ノアさん……ほんの少しだけ待っていてくださいね……皆! 行きますよ!
こうして私達はどうにか第五階層へ到達することができたのでした。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚
古い金貨10枚
。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 ノアさぁぁぁん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます