349日目:冒険者としての差。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第二八日・天気:―


 現在、王都への帰還を目指しセーヴェル遺跡ダンジョン第九階層を移動中です。

 え? 第十階層ですか? それはですね……あっさりと突破してしまいました。

 これも全て第十階層で出会った冒険者パーティ・リコルヌの皆さんのお陰です。


 彼らが教えてくれたルートを進むと罠や魔物に殆ど遭遇することがありません。

 このまま順調にいけば、今いる第九階層も今日中に抜けることができそうです。

 けれど、私はそのことが少しも嬉しくありません。凄く気分がモヤモヤします。


 だって、冒険者としての差を見せつけられたようで悔しいじゃないですか。

 私達は第五階層までですら、少し進むのに毎日あれだけ苦労していたんですよ?

 なのに、リコルヌの人達はそれより難しい第六階層以降をこんなに容易く……。

 はぁ……私もまだまだですね。もっと努力して冒険者の技術を磨かないと……。

 今のままではBランクやAランク冒険者なんて夢のまた夢です……頑張ります!


 そう決意して歩いていると、シェルナメークとアロウナメークに遭遇しました。

 殆ど出会わないと言っても、たまに出くわすんですよね……。

 数は十二匹……避けても通れますが、ここは戦って前に進みましょう!

 成長するためにも、こんなナメークを相手に逃げてはいけないのです!


 しかし、そう意気込むものの、戦闘が始まると戦況は瞬く間に膠着します。

 ノアさんとルイナさんの放つ矢が全てシェルナメークに止められるんです。

 そして、彼らに守られ後方から硬い触角を飛ばしてくるアロウナメーク達……。

 でも、その飛来する触角はサマラさんの展開した障壁がどうにか防いでくれます。

 さて、どうしましょうか? このままではいつまでたっても戦闘が終わりません。


 う~ん、あの正面のシェルナメークさへ崩せばどうにかなるんですけど……。

 けど矢や触角の飛び合う中、シェルナメークへ突撃するのは無謀ですし……。

 そうして悩んでいると、使いますか? と呟き懐から小瓶を取り出すニコさん。

 黒い液体? なんのお薬ですか? まさかこの状況で毒なんて言いませんよね?

 訝しげに尋ねるとニコさんは、当たるとドカンッです! と誇らしげに頷きます。


 ……爆薬ですか。そういえば以前、クラーケン討伐戦でも使っていましたっけ。

 よし……このままだと膠着状態が続きますし、試してみましょう!

 ノアさんとルイナさんは下がって! サマラさんは障壁の強度を上げてください!

 そう指示を出し態勢を整えたら、ニコさんから貰った小瓶を投擲。

 次の瞬間、狭い通路に迸る閃光、轟く爆音、激しい揺れに舞い上がる土煙。


 数分後、土煙が晴れると通路中にナメークの肉片が散らばっていました。

 ケホッ……うん、なんか物凄く悲惨な光景ですが、とりあえず成功ですね!

 って、痛い! 痛いです! ノアさん涙目で叩かないでください!

 分かりました! 分かりましたから! 今度はもう少しマシな作戦を立てます!


 はぁ……立派な冒険者への道はまだまだ先が長そうです。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚

    古い金貨10枚


 (ノ_-;)ハア…大変な目に遭いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る