344日目:鉄扉の先には……。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第二三日・天気:―


 セーヴェル遺跡ダンジョンの探索を始めて十九日目。ついにこの日を迎えました。

 私達は今、第十階層へ続く大広間の入口……巨大な鉄扉の前に立っています。

 一度は諦めたこの場所に、様々な偶然と幸運が重なり奇跡的に到達できました。

 探索を始めた頃は、こんな状況でここへ辿り着くとは夢にも思いませんでしたね。

 ……よし。行きますよ、皆! この大広間を突破して帰れば表層部攻略です!


 しかし、そう意気込んで扉を開けた瞬間、予想外の光景が広がっていました。

 なんと……既に別のパーティが大広間を守護する魔物と戦闘を行っています!

 むぅ……このタイミングで別の冒険者パーティと出会うなんて最悪です。


 えっと、実はダンジョン内で冒険者同士が遭遇することは意外と多いんです。

 なので、無用の争いを避けるために定められた特別なルールが存在します。

 その中の一つに、他者の獲物には手出しをしない、というのがあるんです。

 つまり、誰かが先に戦っている魔物には勝手に攻撃してはいけません……。

 例外があるとすれば、共闘の申し出や救助の要請があった時ぐらいです。


 はぁ……折角、やる気になっていたのに……悔しいです。

 こんなことなら昨日無理をしてでも突入しておくべきでした。

 そうすれば、あそこで戦っていたのは私達だったかもしれないのに……。

 けど、仕方がないですね。今回は諦めて戦闘の行く末を見守りましょう。


 魔物と戦っている冒険者達は男性三人、女性三人の六人パーティです。

 構成は男性が全員剣士で、女性は魔術師二人に錬金術師一人ですか……。

 男性陣が前線で魔物を引きつけ、隙を見て後方の女性陣が魔術を放っています。

 ……うん、素晴らしい連携です。きっと名のある冒険者パーティなんでしょう。


 でも、相手が悪かったですね……。

 彼らが戦っているのは、見上げるほど巨大なキングシェルナメーク。

 シェルナメークの上位種で、斬撃と魔術に強い耐性を持っています。

 その上、周囲には取り巻きなのか通常のシェルナメークの大群……。

 ……これは大丈夫でしょうか? なんだか少し不安になってきました。


 そうして心配しながら見守っていると、女性の冒険者が一人駆け寄ってきます。

 頭まで黒いローブですっぽり覆ったこの人は、確か錬金術師さんでしたっけ?

 えっと……私達に何か用ですか? 戦闘の邪魔なら下層で待ちますけど……。

 

 戸惑いつつそう尋ねると、錬金術師さんは慌てて首を横に振ります。

 そして、厚かましいお願いですが助力して頂けませんか? と錬金術師さん。

 その意外な申し出に思わず目を瞬かせますが次の瞬間、私は力強く頷きます。


 いいですよ! 微力ですが力を貸しましょう!

 そう言うと、目から微かに涙を流す錬金術師さん。

 よし……皆、行きますよ! 錬金術師さん達との共闘作戦です!

 全員で力を合わせて、あのキングシェルナメークを撃破しましょう!


 こうして私達もキングシェルナメーク討伐に参加することになったのでした。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚


 ('-'*)フフ……ナメークハンターズの実力をとくと披露しましょう!

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