341日目:冒険者の一寸先は闇。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第二〇日・天気:―


 今日も引き続きセーヴェル遺跡ダンジョン第五階層の探索を行っています。

 前階層にいなかった魔物や連動する罠は厄介ですが、今のところ順調です。

 数日前に懸念していた残りの食料もまだもう少しだけ余裕があります……。

 ふふっ……この調子で進めば第六階層以降も探索できるかもしれませんね。


 なんて考えていると、第六階層へ続く階段のある大広間に到着しました。

 さて、どうしましょうか? 先へ進むか撤退するか、それが問題です……。

 今ならまだ食料に余裕があるので、第六階層を探索することができます。

 早めに探索が終われば、その先の第七階層へも進めるかもしれません。


 そして、第七階層も順調に進めば、第八階層へ……最終的には表層部攻略へ!

 って、あくまで希望的観測ですね……それもかなり良い方向へ考えた場合の。

 第五階層へ進む際も悩みましたが、現状では表層部の攻略は非常に困難です。

 それでも僅かに可能性があるなら、それを信じて先へ進むべきでしょうか?

 う~ん……本当に難しい問題です……でも、ちゃんと決断しないと……。


 そうして暫く大広間で悩み続けた結果……先へ進むことにしました!

 うん、ここまで来たら諦めきれませんしね……最後まで頑張ります!

 あと半分……あと半分なんです! そうしたら表層部攻略成功です!


 というわけで、無理を自覚しつつ第六階層へ進んだわけですが……。

 ……えっと、これは残り五階層を突破するのは厳しいかもしれません。

 なんて言うか、階層の様子がこれまでと全く違うものに変化しています。

 今まで人工的で綺麗だった通路は、洞窟のように岩肌が剥き出しに……。

 天井のマナ結晶は消え、光源は岩に生えた光苔の淡い輝きだけが頼りです。

 

 ……よし! 撤退! 撤退しましょう! これは無理です!

 第六階層へ到達して僅か数分ですが、関係ありません!

 こんな状況の階層がこの先も続くとなると、今の食料だけでは探索は困難です。

 片道だけなら可能かもしれませんが、帰りの分も考えないといけませんからね。

 なのでこの先の探索は諦め、食料に余裕を持って撤退することにしましょう。


 さて、そうと決まれば急いで階段を上りますよ!

 不必要に留まっていたら、第六階層の魔物達が集まってくるかもしれません。

 しかし、引き返そうとした瞬間、カチッ、という不吉な音が後方から響きます。

 慌てて振り返ると最後尾、階段の近くで泣きそうな表情を浮かべるニコさん!


 ニコさん!? 貴女、ここでやらかすってどういうことですか!?

 と叫び終わらない内に、足元にフワッとした浮遊感が……。

 驚いて下へ目を向けると、いつの間にか地面が消え去っていました。

 そして、私達パーティはそのまま全員が落下してしまいます……。


 セーヴェル遺跡ダンジョンの探索を開始して十六日目……。

 私達は今まででも最大級の窮地に陥ってしまったようです。

 あぁ、眼下は真っ暗です……どこまで落ちていくんでしょうね……。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚


 。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 ウワァーン!! 死んだ……絶対死んだのです!

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