336日目:投げるだけの簡単なお仕事。
神聖歴六一〇三年・
ふぁ……眠いです。セーヴェル遺跡ダンジョンの探索を始めて今日で十一日目。
現在、第三階層のとある小部屋の前に防衛陣地を築き周囲の警戒をしています。
小部屋内では、昨日からニコさんが対大百足ガーゴイル用の薬品を製造中です。
はぁ……けど、ダンジョンで陣地防衛をすることになるとは思いませんでした。
ここへ続く通路を固める数々の土嚢や木柵……見た目は完全に戦場のソレです。
あ、土嚢や木柵はいつものように、ノアさんが空間魔術で出してくれました。
本当、ノアさんのあの魔術の中には色々な物が収納されていますね。凄いです。
それから数時間後、小部屋の中からようやくニコさんが外へ出てきました。
手には蒼白く輝く乳白色の小瓶が三本。中の紫色の液体が少し透けて見えます。
完成したんですね! でも、そんな瓶に入れても大丈夫なんですね……。
ミスリル銀を腐食させるほどの薬品という話だったので、少し意外です。
そう言うと、この瓶は魔水晶製で凄く高いんですよ? と呆れるニコさん。
え? 魔水晶ってあの魔水晶ですか? 上級魔術や神術の触媒にも使う?
驚いて訊き返すと、その魔水晶です、とニコさんは自慢げに頷きます。
……ちょっと待ってください……その瓶の値段って一本いくらですか?
嫌な予感がして尋ねると、そっと耳打ちされる驚愕のお値段……。
うん……聞かなかったことにしましょう。私は何も知りません!
というわけで、そんな薬品を持って私達は例の大広間へ向かいます。
到着すると、今日も天井には大百足の彫刻が居座っていました……。
ふふっ……でも、私達を見下ろすのもこれが最後ですよ、大百足ガーゴイル。
さて、誰が薬品を投げますか? え? 私? く、クジで決めましょう? ねぇ!
うぅ……押し付けられてしまいました……ちゃんと当てられるか不安です。
あと、投げたら息を止めて急いでその場から離れてくださいって、ニコさん。
本当にこの薬品は安全なんですよね!? 私がやられたりしませんよね!?
……なんだか心配になってきました。でも、覚悟を決めて投げましょう。
そうして小瓶三本を立て続けに大百足の彫刻、その頭部を狙い投擲します。
投げ終わったら急いで撤収です。結果を確認している余裕はありません。
今は皆が待つ通路の先へ走るだけです……すると、背後で響く轟音と震動。
あぁ、気になります……でも振り返ったら、足を止めたらダメな気がします。
あとで、あとで皆と確認すればいいんです……今は急いで逃げましょう……。
数分後、どうにか皆の元に戻れました。
結果を伝えると、なら最終的な確認は明日行いましょう、とニコさん。
曰く、揮発した薬剤がまだ残っている可能性があるので今近付くと危険だとか。
……どれだけ強力な薬品なんですか……やっぱり安易に頼ってはダメですね。
はぁ……でも、それなら今日は例の小部屋でゆっくり休みましょう。
あそこなら、ダンジョン内でも少しは安心して休めそうですからね。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚
(ノ_-;)ハア ニコさんのお薬はいつも危険過ぎます……。
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