333日目:階層の守護者。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第一二日・天気:―


 さて、今日も私達はセーヴェル遺跡ダンジョンの第三階層を探索中です。

 このまま順調に進めば次の第四階層へは、あともう少しで辿り着けます。

 でも、焦って先を急いではいけません。油断したら第二階層の二の舞です。

 ここは慎重にいかないと……そして、皆で無事に第四階層へ行きますよ!


 そうして今まで以上に罠や魔物に注意しながら進むこと数時間。

 ようやく第四階層へ続く階段がある大広間の入口に到着しました。

 ふふっ、ここまで来ればもう安心です。あとは階段を下るだけ!

 ……よし、行きましょう! いよいよ第四階層へ突入です!


 けれど、そう意気込んで大広間に足を踏み入れた瞬間、背筋に寒気が……。

 驚いて周囲を見渡すと、天井に彫られたそれが目に飛び込んできました。

 大きな百足ムカデです……円形の天井、その一面に巨大な百足が彫刻されています。

 うわぁ……凄いですね……でも、まるで生きているみたいで気味が悪いです。

 

 そんなことを思いながら見上げていると、大広間が突然大きく揺れ動きます。

 ちょっ!? いきなりなんですか!? 一体なにが起こって……って、え?

 大揺れから身を守るためにその場で屈んだ私は、それを見て言葉を失います。

 だって……さっきまでただの彫刻だった大百足が動き出しているんです!

 もう! なにがなんだか分かりませんが戦闘準備です! 襲ってきますよ!


 私が声を上げたのと、地面へ降りてきた大百足が突進してくるのはほぼ同時。

 間に合わない……しかし、そう思った瞬間、大百足の目の前に展開する光の壁。

 サマラさんの神術による守護障壁! よし、今の内に通路まで一旦退避です!

 そう指示を出し、全員慌てて大広間の外へ……すると途端に止む大百足の襲撃。


 ……どうやら大広間へ足を踏み入れなければ、襲ってくることはないようです。

 それから暫く様子を見ていると、大百足は再び天井へ戻り彫刻へ姿を変えます。

 ……なるほど、そういうことですか。あの大百足の正体が分かりましたよ。


 大百足……あれは恐らくガーゴイルの一種です。

 ガーゴイルは元々魔除けとして使われていた石像だと言われています……。

 それが長い年月を経てマナを帯び、いつの間にか命を持つ魔物になったとか。

 その姿形は様々ですが、まさかあんな彫刻までガーゴイル化するなんて……。


 でも、困りましたね……。

 ガーゴイルはその性質上、守護する領域へ侵入するものを容赦なく攻撃します。

 そして先程の様子から、あの大百足は恐らく眼前の大広間全体が守護領域です。

 ……第四階層へ続く階段はこの大広間の先にしかないのに……どうしましょう?

 

 戦うにしても、あの巨体と早さでは苦戦は免れません……。

 下手をするとダンジョン探索の継続が困難な大怪我を負う可能性もあります。

 う~ん……やはり遺跡系ダンジョンの攻略は一筋縄ではいきませんね……。


 ……よし、とりあえず第三階層をもう一度探索してみましょう。

 大百足攻略の手掛かりがなにか見つかるかもしれません……。

 

 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚


 (゚-゚;)ウーン 凄い強敵が現れたのです……。

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