329日目:赤帽子迎撃戦。
神聖歴六一〇三年・
セーヴェル遺跡ダンジョンの探索を開始して四日目……キツイです。眠いです。
ノアさん達と罠で分断されたため、昨日から各自の負担が急激に増しています。
けれど、そんな状態でも魔物は襲撃を待ってはくれません……。
通路の曲り角、その先から不穏な音が響いてきます。
……ガリガリ、ガリガリと重くて硬いモノを引き摺っているような感じです。
これは……ナメークじゃありませんね。恐らく何か別の魔物です……。
どうしましょう? 通路を引き返し隠れてやり過ごすか、それとも迎撃するか。
しかし、対処を迷っていると音が急にこちらへ近付いてきます。
むぅ……仕方ありません……覚悟を決めて迎え撃ちますよ!
ルルちゃんは私と一緒に前衛! ルイナさんは後ろで援護を!
そうやって態勢を整えていると、通路の角から敵が姿を現します。
真っ赤な帽子を被り、錆びた両手斧を引き摺って歩く痩せ細った醜い老人。
その燃えるように赤い瞳には、私達への明確な殺意だけが宿っています……。
ッ……まさかこの状況で赤帽子・レッドキャップに遭遇するなんて……。
赤帽子は人間を殺すことを至上の喜びとする極めて凶悪で残忍な魔物です。
自衛でも、食べるためでもなく、ただ襲い殺すことだけを目的としています。
うぅ……正直、相手にしたくはありません……というか逃げたいです。
でも、撤退しても赤帽子はどこまでも執拗に追いかけてきますからね。
なので勇気を振り絞り、ここで仕留めるしか生き残る道はありません。
よし……ルルちゃん、行きますよ! ヤツが動く前に仕掛けるんです!
そう声を掛けますが、ルルちゃんは震えてその場から動こうとしません。
彼女が剣を構える視線の先には、ニヤリと笑みを浮かべる赤帽子の姿。
ルルちゃん……恐怖にのまれましたね。仕方ありませんか、私も恐いですし。
それに多分、これほど純粋な殺意を向けられるのも初めてでしょうしね……。
やむを得ません……ルイナさんと二人だけで戦いましょう……突撃です!
そうして赤帽子との戦闘が始まります。
私の接近に気が付き、両手斧を振り回し牽制する赤帽子。
それをギリギリで躱しながら斬りかかる機会を探ります。
しかし、なかなか隙が生まれません。
絶え間なく振り下ろされる両手斧……。
その細い腕で、この膂力……やはり魔物ですね。
って、いい加減避けるのも飽きてきましたね……仕掛けますか。
そう思い、私は左手に持った鞭を赤帽子の顔へ繰り出します。
けれど、それを咄嗟に斧の柄で弾きニヤリと笑う赤帽子……でも残念でした。
斧の動きが止まるその一瞬を待っていました……今です、ルイナさん!
次の瞬間、ルイナさんの放った三本の矢が赤帽子の頭と両目を貫きました。
ガッ……と短く悲鳴を上げ、その場に倒れ込む赤帽子。
ふぅ……どうにかなりましたね……素材を回収したら先を急ぎましょう。
また厄介な魔物に遭遇する前に、ノアさん達と合流しないと……頑張ります。
今日の収支
(赤帽子の各種素材)
――――――――
残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚
(_ _;)… 疲れたけど前に進まないと……。
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