328日目:焦りと油断……。

 神聖歴六一〇三年・夢見虎ゆめみとらの月第七日・天気:―


 今日も昨日と同じくセーヴェル遺跡ダンジョンの第二階層を探索しています。

 でも、当初の計画だと既に第三階層へ到達していないといけないんですよね。

 はぁ……最初はあんなに順調だったのに……一体どこで間違えたんでしょう?

 って、愚痴っても仕方ないですね……表層部攻略を目指して頑張らないと……。


 そうして少し憂鬱な気分のまま探索は続きます。

 とりあえず、一刻も早く第三階層に降りないといけません……。

 第三階層への到達がこれ以上遅れれば、それだけあとの余裕がなくなります。

 最悪の場合、ダンジョンの攻略が不可能になってもおかしくはありません……。

 だから、早く、早く、第三階層へ向かわないと……急いで先に進むんです!


 しかし、そうした焦りは必ず良くない隙を生じさせます……。

 通路を足早に歩いていると、カチッと何かを踏み抜いた感覚。

 あ! っと気付いた時にはもう既に遅く……天井から通路に落ちてくる壁。

 

 慌てて避けますが、壁の落下地点とタイミングが問題でした……。

 ……壁が落ちてきた場所は、ちょうど隊列のど真ん中。

 列の中程を歩いていたサマラさんが偶然足を止めた、その瞬間。

 つまり、なにが言いたいかというと……私達パーティは分断されたんです!

 

 状況を理解すると急いで壁へ駆け寄り、どうにかできないか確認します。

 けれど……ダメですね。この罠は一度作動すると暫く元に戻らないヤツです。

 向こう側の様子が気になるものの、壁が厚いせいか呼んでも返事はありません。

 最悪です……私が焦って注意を怠ったばかりにパーティが危険な状況に……。


 動揺しその場に立ち尽くしていると、突然右肩を背後から強く叩かれます。

 驚いて振り返ると、そこには真剣な表情で私を見つめるルイナさんの姿が。

 そして、大丈夫。彼女達は大丈夫から落ち着きなさい、と励ましてくれます。

 ……そう、そうですね。あちらにはノアさんもいますし、きっと大丈夫です。


 ふぅ……よし。とりあえず冷静になって現状を整理しましょう。

 まず私達は罠にかかりパーティを分断されてしまいました……。

 私のほうに残っているのはルルちゃんとルイナさんの二人。

 壁の向こうには、ノアさん、サマラさん、ニコさん、そしてソシオ。

 罠の解除または破壊は困難なので、再会するには先へ進む必要があります。

 

 うん……落ち着いて状況を把握すると絶望するのはまだ早いですね。

 ……ノアさんがあちら側にいてくれて助かりました。

 食糧とダンジョンの地図は彼女も持っていますから……。

 なので、諦めずダンジョンを進んでいればきっと出会えます!


 よし……ルルちゃん、ルイナさん、出発しますよ!

 目指すは第三階層の入口にある大広間! ノアさんもそこへ向かうはずです!

 大丈夫、大丈夫です……ノアさんとサマラさん、ニコさん、ソシオなら大丈夫。

 

 心配で挫けそうになる自分にそう言い聞かせ、私は歩みを進めます――。

 頑張れ私……この窮地を脱して、皆で一緒にダンジョンを攻略するんです!

 

 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨13枚、銀貨38枚、銅貨34枚


 (p_q*)シクシク 泣かずに前へ進まないと……。

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