313日目:地下温泉のおまけ。

 神聖歴六一〇三年・木目牛このめうしの月第二〇日・天気:雨/曇


 雨の降るお昼過ぎ……森蛙の洞窟探索からようやく王都へ戻ってきました。

 こんなに早く帰還できたのは洞窟を詳細にマッピングしていたからです。

 お陰で昨日の内に洞窟を抜けだし野宿をしたあと、朝一で王都を目指せました。

 さて、冒険者ギルドで報告を終えたらゆっくり休みましょう。


 というわけで、王都の東門から真っ直ぐに冒険者ギルドへ。

 到着後、受付に行くといつものように眼帯お姉さんが声をかけてきます。

 よう! お疲れさん、意外と早かったじゃないか、ってどの口が言いますか。

 専門外のお仕事なのに指名依頼を使ってまで私達に回しておいて白々しい。

 いい経験にはなりましたけど、面倒な依頼だったことには変わりないのです。


 と、心中で愚痴りつつも表情には絶対に出しません。

 もしも口を滑らそうものなら、もっと酷い依頼が絶対に回ってきます。

 それを避けるためにも笑顔で調査報告をして、早く宿へ帰りましょう。


 しかし、報告を終えると眼帯お姉さんは難しい表情を浮かべます。

 ……何か問題でしょうか? あ、もしかして調査不足なんじゃ!?

 ま、待ってください……未経験なりにちゃんと調査したんですよ?

 その辺を考慮してですね? どうか失敗扱いだけはやめてください!


 すると、依頼の報告自体は問題ないんだが……、と困った様子で返されます。

 ……なら何がいけないんでしょう? 報告におかしな部分はないはずです。

 わけが分からず困惑していると、これがちょっとな……、と眼帯お姉さん。

 彼女が指差したのは提出した洞窟の地図……その最終地点にある温泉でした。

 え? 森蛙たちが巣にしていたあの地下温泉が原因? どうしてですか?


 予想外の返答にますます混乱していると、眼帯お姉さんが説明してくれます。

 それによると、今回発見した地下温泉は今まで未発見だったものだとか……。

 なので、詳細な地図まで付いた温泉の位置情報は凄く価値があるそうです。

 これは……もしかして臨時報酬のチャンス!? 頑張った甲斐がありました!


 思わずその場で喜ぶと、待て待て、話は最後まで聞け、と眼帯お姉さん。

 すみません……それでなんですか? いくら報酬が増額されるんですか?

 注意されつつもワクワクして尋ねると、追加報酬はない、と告げられます。

 そればかりか、ギルドとしてはこの情報を公表する義務があると……。

 ちょっ!? そしたら情報としての価値がなくなるじゃないですか!


 驚いて声を上げると、眼帯お姉さんに落ち着くように言われます。

 そして、最大で十日だ……その間にどうにかしろ、と眼帯お姉さん。

 ふむ、察しました。つまり十日の間に情報を売却してこいと……。

 そう確認すると、眼帯お姉さんは無言で頷きます……。


 その後、規定通りの報酬を受け取り私達は宿へ。

 さて、この情報……どこへ売りましょうか?

 信用と資金があるそんな買い手を急いで探さないと……。


 今日の収支

 銀貨:-7枚(宿泊費×6+ソシオ)(食事◎、寝床◎)

    +90枚(依頼報酬)

    +50枚(森蛙売却費:数不明)

 ――――――――


 残金:金貨2枚、銀貨62枚、銅貨34枚


 ('-'*) これは大儲けのチャンスです!

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