314日目:ドキドキの売却交渉。
神聖歴六一〇三年・
さて、今日は急いで温泉情報の売却先を決めて、交渉しに行かないと……。
というわけで今朝は朝食後、部屋で緊急のパーティ会議です。
はぁ……これも全てあの指名依頼の発注者が冒険者ギルドだったせいです……。
ギルドは公的機関なので、あの手の情報は平等に公開する義務があるんだとか。
これが一般の依頼中に発見したものだったら交渉次第で時間を稼げたのに……。
少なくとも十日という短期間で売却先を探す苦労はしなくてすみました……。
まぁ、十日だけでも公表を待ってくれたのは、優遇されたほうなんですけどね。
普通なら報告の翌日に情報を公開することも珍しくないらしいので……。
数時間後、猫又商会王都支店に売却することで全員の意見がまとまりました。
支店長のグリさんが苦手なので、できれば避けたかったんですけど……。
でも、時間がないので仕方がありませんね……価格交渉頑張ります!
そうして気は進まないながらも、王都東区・第二商業地域へ……。
メンバーは私とノアさん、サマラさん。残りはギルドでお仕事です。
……久々に訪れましたが相変わらず大工房や大商会があって賑やかですね。
そんな場所でも、猫の看板を掲げた石造りの建物は割りと目立ちます。
うぅ……やっぱり入りたくないですね、服も以前と同じモノですし……。
外套なんてこの前買った地味で野暮ったいヤツですよ? 最悪です。
なんて悩んでいると、ノアさんに扉を開けられます。
……もう少し心の準備がしたかったです。
よ、よし……周りの目は気にせず受付へ行きましょう。
受付で用件を伝えると数分後、応接室へ案内されます。
入室すると、中で待っていたのはやっぱりグリさんでした……。
灰色の毛並みが美しいケット・シー。顔を合わせるのはこれで二度目です。
さて、それでは交渉に入りましょう……あ、勿論売却期限などは秘密です。
その後、温泉の話を聞き終えると、グリさんは難しい表情を浮かべます。
しかし暫くすると重々しく頷き、金貨十五枚出しましょう、とグリさん。
そして小脇の革袋から金貨を取り出し、目の前に積み上げ始めます。
!? 金貨十五枚! 凄い大金です! けど適正価格なんでしょうか?
状況の早さに戸惑っていると、時は金なりですよ? と笑うグリさん。
意味が分からず首を傾げると、グリさんは積んだ金貨を一枚、革袋へ戻します。
その行動に困惑しているとさらに一枚、金貨が革袋の中へ……。
ハッ!? まさかグリさん、情報の売却期限に気付いてるんじゃ……。
そうでなければ、こんな露骨に足元を見た交渉をするはずがありません。
……商会の情報網を侮っていました……商人恐るべし。
結局、最初の金額で情報を売却しました……私達の完敗です。
かなり損をした気がしますがしょうがありません。
この悔しさを次に活かすと心に決め、今日はもう宿屋で休みます。
今日の収支
銀貨:-7枚(宿泊費×6+ソシオ)(食事◎、寝床◎)
+5枚(居残り組み依頼報酬)
金貨:+15枚(温泉情報売却費)
――――――――
残金:金貨17枚、銀貨60枚、銅貨34枚
(ノ_-;)ハア… やっぱりグリさんは苦手です。
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