312日目:地下洞窟の先には……。

 神聖歴六一〇三年・木目牛このめうしの月第一九日・天気:―


 さて、昨日から森蛙の巣と思しき洞窟の調査を開始したんですが……。

 意外と深いですよ、この洞窟……進んでも、進んでもまだ先があります。

 はぁ……まさか未発見のダンジョンなんて笑えないオチじゃないですよね?

 でも、そう思えるほど深く複雑に入り組んでいて、少し不安になります。


 そんな心配をしながらも私達は洞窟のさらに奥へ。

 迷わないようにマッピングをしつつ慎重に進まないと……。

 でも、本当に終わりが見えませんね、この洞窟……ちょっと長すぎです。

 

 あと奥へ進むほどになんだか何かが腐ったような妙な臭いがしてきます。

 場所によっては口元に布を巻いて防がないといけないほど酷い臭いです。

 うぅ……吐き気が……あ、大丈夫ですよ、ニコさん。お薬はいらないです。


 そうして臭いに耐えながら進むこと数時間。

 今度は異様な地下空洞に辿り着きました……。

 空洞全体が薄らと白いもやに覆われていて先が全く見通せません。

 あとジメジメと湿っていて異常に暑いです……なんですか、ここは?


 困惑していると靄の奥からゲッコゲコゲコと森蛙の大合唱が始まります。

 途端に空洞内で反響する鳴き声……思わず耳を塞いでしまうほどの騒音です。

 くっ……こんなに煩いと靄の影響もあって森蛙の位置が把握できません。

 今襲われたら森蛙が相手でも流石に不味いです……急いで視界を確保しないと。

 なので、ノアさんお願いします! 風の魔術で靄を吹き飛ばしてください!


 次の瞬間、空洞内を吹き抜ける突風。

 その風が止んだあと目の前に姿を現したのは……森蛙の大群と地底湖?

 あ! 分かりました! 分かりましたよ! ここの正体が!

 独特の臭いに、空洞内の異常な湿度と気温、加えて湖面から立ち昇る靄……。

 水面を埋め尽くすほどの森蛙がひしめく地底湖の正体は……地下温泉です!


 そして、これで地上の池や沼の水温が高かった理由も説明がつきます。

 恐らくこの温泉と池沼へ延びる地下水脈がどこかで繋がっているんです。

 だから、今の時期でも池や沼の水があんなに温かかったんですよ……。

 

 でも、私達が寒さに耐えていた時も、森蛙たちは地下で温泉暮らしとか……。

 あ……なんだか急にムカムカしてきました。森蛙のくせに生意気です!

 ……私だってたまには温泉でゆっくりしてみたいです!


 ふふっ……覚悟しなさい、森蛙たち!

 人間様を差し置いて、温泉三昧なんて贅沢をした罪は重いですよ。

 ……今すぐ! 即刻! この地下温泉を明け渡すのです!

 そう叫んだ瞬間、ゲコォォ! と雄叫びを上げる森蛙たち。

 くっ……森蛙のくせに! こうなたら全面対決です! 皆、突撃です!


 数時間後……勝った……勝ちました!

 森蛙たちをほぼ殲滅しましたよ! これで地下温泉は私達のものです!

 なんて思ったんですが、水面にはプカプカと浮かぶ大量の森蛙の死体……。

 ……流石にこれを回収したあとの温泉に浸かる気分にはなれませんね。


 はぁ……帰りましょう。そして宿屋でゆっくり休みます。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨29枚、銅貨34枚


 (ノ_-;)ハア 勢い余ってやり過ぎました……最悪です。

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