299話目:ワイバーン狩り。

 神聖歴六一〇三年・木目牛このめうしの月第六日・天気:晴


 今朝の天気は雲一つない快晴! ワイバーン狩りに最適な天候です!

 というわけで朝食後、山頂付近の岩場に向かって出発します。

 ベースキャンプの冒険者さん達曰く、一番安全に狩りができる穴場だとか。


 数時間後、ようやく目的地に到着です。

 ……なるほど。周囲を見渡してみるとここを勧められた理由がよく分かります。

 周辺より開けたこの岩場はちょうど森林限界付近に位置しているんです。

 なので、辺りには上空から身を隠せる木々が少しですがまだ存在しています。

 ……これならワイバーンを安全に待ち伏せできますね……まさしく穴場です。


 そうして木陰に身を潜ませ、暫く空に目を凝らしていると……来ました!

 だいぶ上空に大きな影が二つ……あぁ……でも降りずに通過していきます……。

 けど、今のは通り過ぎてくれて感謝ですね。二体同時に相手とか無理ですし。

 ……しかし、その後もワイバーンは現れるものの一向に降りてきません。

 むぅ……このままでは時間の無駄ですね。注意を引くために餌でも置きますか。


 そこで携帯している食料の中から、一番いいお肉を岩場に設置することに。

 ……こんなことなら昨日の蛙肉を少し残しておくべきでした……大失敗です。

 さて、お肉をどこに置きましょう? 木陰から離れ過ぎてもいけませんよね?

 

 それから暫くお肉を持って岩場をウロウロしていると、ノアさんの叫び声が。

 え? 上? なんですかね……? って、ワイバーンが私の真上にいる!?

 叫び声の意味に気が付き、慌てて岩と岩の間へと倒れ込みます。

 その瞬間、凄まじい風と風切り音を伴い頭上を通過するワイバーン。

 そして再び大空へ舞い上がると、私を見据え上空を旋回し始めます。


 これは完全に狙われていますね。どうしましょう?

 最悪の状況に頭を抱えていると、ワイバーンへ矢を放つノアさんとルイナさん。

 まだ距離があるので届いてはいませんが、牽制にはなっているようです。

 今の内に皆のところへ戻らないと。あそこなら結界があってここより安全です。

 

 けれど、そう思って駆け出した瞬間、上空で咆哮するワイバーン。

 嫌な予感がして一瞬だけ振り返ると……ヒッ!? 空から火球が迫ってきます!

 逃げますが瞬く間に近付く火球。守護の指輪の光の盾も一瞬で蒸発。

 あ、これはダメかも。って、諦めるわけにはいきません! 私は冒険者です!


 火球が当る直前、慌てて火蜥蜴の外套に全身を包みその場へ倒れ込みます……。

 直後、体に走る重い衝撃。続いて感じる暖かさと何かが燃える臭い。

 熱ッ!? 熱いですよ!? 助かりましたけど燃えないはずの外套に火が!?

 急いで火の点いた火蜥蜴の外套をその場に脱ぎ捨て、再び全力疾走。

 火球も連続では放てないはずなので、逃げるなら今しかありません!


 数分後、どうにか皆の元に戻れました。

 しかし、その間にワイバーンはどこか飛び去ったようです。

 はぁ……死ぬかと思いました。これは強敵ですね。

 ……もう今日は一旦ベースキャンプに引き上げましょう。

 ちょっと作戦会議が必要みたいです。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:銀貨37枚、銅貨64枚


 。。゙(ノ><)ノ ヒィ 撤退! 撤退です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る