298日目:予定外の雨……。

 神聖歴六一〇三年・木目牛このめうしの月第五日・天気:雨


 あうぅ……夜明け前から降り始めた雨がまだ止んでくれません。

 昨日の天気が曇だったので怪しんでいたんですけど、こんなに崩れるなんて。

 う~ん……今日は山へ登るのは諦めたほうが良さそうですね。

 雨で視界が奪われた中、ワイバーンと戦うのは危険過ぎますし……。


 というわけで朝食時、皆に今日もベースキャンプに留まることを連絡します。

 すると、どこか安心した様子で息を吐きだし、肩の力を抜くサマラさん。

 あ……そうでした。雨の中のワイバーン狩りとか彼女には最悪の状況です。

 嫌な記憶を思い出していませんかね? うぅ……もっと配慮が必要でした。

 うん……次からは今まで以上に天候などにも気を配りましょう。


 さて、ワインバーン狩りは延期ですが、休んでいるわけにはいきません。

 ベースキャンプの周りでも色々と採取したり、狩猟したりできますからね。

 なので、今日はとりあえず皆でキャンプ周辺の森を探索することにします。

 

 そうして森を適当に歩くこと数時間。

 ふむ……王都南の森ほどではありませんが、そこそこ資源が豊富です。

 一般的な薬草ならわざわざ南まで行かなくても大丈夫かもしれません。

 でも、冒険者のベースキャンプが近い影響で魔物の数は少なめです。

 ゴブリンやオークなどが目当てならやはり南の森のほうが効率的でしょう。

 

 なんて考えていたらフォレストフロッグに遭遇しました。

 フォレストフロッグ、森蛙は中型犬ほどの大きな蛙です。一応は魔物指定種。

 ふふっ、実際に出会うのは初めてですが、なんだか懐かしいですね。

 以前、先輩冒険者さんがこの肉をご馳走してくれましたっけ……。

 あの頃は冒険者になったばかりで、こんなお肉でもご馳走でしたね。

 うん、ちょっと久々に食べてみたくなりました……狩りますか。


 そう思い小剣の柄に手を掛けると、身の危険を感じたのか急に鳴きだす森蛙。

 ゲッコゲコゲコという意外に重低音な声が森中に響き渡ります……。

 すると、四方八方から同じようにゲッコゲコゲコと鳴き声が……。

 ハッ! まさか仲間を呼んだ!? くっ……姿は蛙でもやはり魔物ですね!

 むぅ……弱くても囲まれると面倒です……急いで倒して撤収しましょう。


 しかし、最初の一匹を狩り終わった頃には、周囲は森蛙だらけに……。

 よ、予想以上に集まるのが早いですね……近くに巣でもありましたか?

 もう! こうなったら全面対決です! そして夜は蛙肉パーティです!

 

 数時間後……どうにか全部倒し終わりました。

 ……それにしても六〇匹って。巣が近くにあったとしても多過ぎです。

 あ……もしかして森に他の魔物がいないから増えやすいんですかね?

 冒険者も森蛙はそこまで進んで狩ることはありませんし……。

 これは帰ったらギルドに報告ですね。問題が起こる前に対処しないと。

 さて、疲れたのでキャンプへ撤収です! 撤収~。


 そうそう、久々に食べた蛙肉は……微妙なお味でした。

 ……変ですね。前はあんなに美味しかったのに……不思議です。

 

 今日の収支

 森蛙のお肉(キャンプで全て消費)

 ――――――――

 残金:銀貨37枚、銅貨64枚


 (゚‐゚*) 楽しみだったのにショックです、蛙肉。

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