293日目:故障原因と対策。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第三一日・天気:曇


 昨日のお昼頃から始めた時計塔の調査は、日付が変った今もまだ続いています。

 徹夜ですよ、徹夜。もう! 構造が複雑だし歯車も多過ぎるんですよ、まったく!

 お陰でこんな深夜まで頑張ってもまだ半分しか調べ終わっていません……。

 はぁ……先は長いですね。朝までに終わるでしょうか? 終わってください。


 けれど、それから数時間後……未だに故障箇所は見つかりません。

 ……変ですね……これだけ調べて異常が発見できないなんて。

 皆で一緒に確認しているので見落としもないはずなんですけど……。

 しかし、そう思った瞬間、背後から歯車の騒音に負けないほど大きな金属音が。


 振り返ってみると、抱えるほど大きな歯車が床に落ちていました。

 え? もしかしてさっきのはこれの落下音ですか? 嘘ですよね?

 こんな歯車が落ちてきて、仮に当たったら大怪我じゃ済みませんよ!?

 ……けど、一体どこから? 上のほうは調べ終わって異常もなかったのに。


 困惑しつつ頭上をランプで照らすと、歯車の影にサッと何かが逃げ込みます。

 ……どうやらこの時計塔、私達以外に妙なのがいるみたいですね。

 恐らく今のが故障の原因に違いありません……でもなんでしょうね?


 暫く全員で悩んでいると、突然ゴソゴソと荷物を漁り始めるニコさん。

 急にどうしたんですか? もしかしてアレの正体が分かったとか?

 期待しながら尋ねてみると、あれはグレムリンです、と力強く頷くニコさん。

 ……グレムリン? 魔物ですかね? 初めて聞く名前です。


 するとニコさんが詳しく説明してくれます。

 それによると、グレムリンは道具や機械に悪戯をする妖精の一種なんだそうです。

 見た目は兎に似ていて手足が妙に長いんだとか……想像すると少し不気味です。


 でも、そんなのをニコさんはよく知っていましたね?

 そう訊くと、あれは錬金術師の天敵です、と苦々しい表情を浮かべるニコさん。

 なんでも錬金術師は機材に悪戯されることがよくあるらしいです。

 ……けど、そういうことなら対処法もバッチリですよね、ニコさん?


 しかし、ニコさんは力なく首を横に振ると周囲に飴玉をばら撒き始めます。

 えっと……急に何をやっているんですか? ニコさん? 大丈夫ですか?

 予想外の行動に戸惑いながら声をかけると、大丈夫です、とニコさん。


 話を聞くと、グレムリンは力尽くで追い出すと倍の数で仕返しに来るんだとか。

 なので、大好きな飴をあげてこれ以上悪戯しないように頼むんだそうです……。

 な、なんて迷惑な……でも、そういうことなら仕方ないですね。


 よし、このことをギルドに報告して、あとの対応はあっちに任せましょう。

 下手に手を出して妖精の恨みを買ったら大変です。では、撤収しますよ~撤収!


 今日の収支

 銀貨: -10枚(国民税)

    -15枚(国民税:ノアさん)

    -15枚(国民税:ニコさん)

     -5枚(国民税:ルルちゃん)

    -10枚(国民税:サマラさん)

    -3枚(ソシオ:継続登録費)

    -6枚(宿泊費×5+ソシオ)(食事◎、寝床◎)

    +15枚(依頼報酬)

 ――――――――

 残金:銀貨51枚、銅貨64枚

 

 (´▽`) ホッ 依頼も終わり、どうにか税金の支払いも済みました。

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