290日目:少しずつ戻る日常。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第二八日・天気:晴


 ふぁ~……よく寝ました。……あれ? 今朝は子供たちの声がしませんね。

 いつも目が覚めると、食堂のほうからちびっ子たちの騒ぎ声が聞えてくるのに。

 ……って、そうでした。ここはもう教会じゃないんでしたね。

 まだ少し寝惚けているみたいです……顔を洗ってシャキッとしないと……。


 顔を洗い、宿の食堂で朝食を終えたら、冒険者ギルドへ向かいます……。

 きっと、こうやって段々と以前と変わらぬ生活に戻るんでしょうね……。

 ……なんだか教会での思い出が薄れていくようで、少しだけ哀しいです。


 そんなことを考えていたら、いつの間にかギルドに到着しました。

 はぁ……いつまでも寂しがっていてはダメですね。

 皆にもう会えないわけじゃないんですから……しっかりしろ、私!

 ……よし、気持ちを切り替えて今日も一日お仕事を頑張りましょう!

 そうして大冒険者になって、再会したちびっ子たちを驚かせるんです!


 そう意気込んで中へ入った直後、受付の眼帯お姉さんに呼ばれます……。

 何の用ですかね? もしかして依頼した鍵の鑑定結果が出たんでしょうか?

 でも、少し早すぎる気がします。う~ん……何だか嫌な予感が……。

 この人、割りと無茶な依頼を回してきますからね。油断してはいけません。


 若干の期待と大きな不安を感じつつ、眼帯お姉さんの待つ受付へ。

 すると、お姉さんから二枚の紙を無言で渡されます……。

 まさかまた指名依頼ですか!? しかも今度は二件!?

 思わず叫びだしそうになりながら内容を確認してみると……。


 なんと、ルルちゃんとニコさんの昇格通知でした!


 二人の冒険者ランクがそれぞれ一つずつランクアップするみたいです!

 これでルルちゃんがDランク、ニコさんがCランクになります。

 今まで色んな依頼をコツコツと頑張ってきた成果ですね!

 はぁ……でも、羨ましいです。私も早くBランクになりたい……。

 これだけ指名依頼とかをやっているのになぜ上がらないんでしょう?


 その思いが表情に出たのか、眼帯お姉さんにクスクス笑われます。

 生き急がずにゆっくり進みな、まだまだ若いんだから、と……。

 そして、一年未満でCランクなら十分過ぎると、珍しく褒めてくれます。

 けど、普段より優しくて少し怪しいですね。何か企んでいませんか?

 なんて訝しんでいると、ああん? と睨んでくる眼帯お姉さん。


 ヒッ! ご、ごめんなさい! なんでもありません!

 きょ、今日も冒険者らしく地道に依頼をこなしてきます!

 あまりに恐かったので慌ててその場から逃げだしました……。

 はぁ……さて、宣言通り真面目にお仕事に取り組みましょう。


 そうそう、鍵の鑑定結果は予想通りまだ出ていませんでした。

 早くても数日先になるそうです。

 ふふっ、どこの鍵でしょうねぇ……結果が今から楽しみです。


 あ、依頼が終わったら今夜はランクアップのお祝ですよ!

 そっちも凄く楽しみです!


 今日の収支

 銀貨:+6枚(依頼報酬。報酬増額中)

 銀貨:-12枚(宿泊費×5+ソシオ)(寝床◎、食事☆)

    -10枚(酒代×4)

 ――――――――

 残金:銀貨84枚、銅貨26枚


 (゚∇゚ ;) ……お、お金が……お金が!?

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