287日目:依頼報酬と白猫の正体。
神聖歴六一〇三年・
はぁ……昨日の夜はよく眠ることができませんでした。
理由は冒険者ギルドから突然届いた指名依頼の完了を知らせる手紙です。
あんな手紙が送られてくるとか初めてなので凄く困惑しています……。
なので、今日は午前中にギルドへ行って詳しい話を聞くつもりです。
ここであれこれと悩んでいても仕方がないですからね。行動あるのみです。
というわけで朝食後、ノアさんと一緒に冒険者ギルドへ向かいます。
やっぱり例のお薬は凄いですね……たった一晩で皆、元気になりました。
でも、ノアさんも次は絶対に飲まないそうです……うん、私と同じですね!
どんなんに効果のあるお薬でも加工前の素材を知っていると……。
いえ、これ以上はやめましょう。思い出すと気分が悪くなります。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかギルドに到着しました。
中に入ると、すぐに受付の眼帯お姉さん……ギルドマスターに呼ばれます。
そして、そのままギルドホールの奥にある個室へと案内されました。
入室し全員が椅子に座ると、眼帯お姉さんから手紙の詳細が説明されます。
それによると、猫又商会のほうから依頼完了の届け出があったんだとか。
……そういえばブランさん、支店に話をするとか言っていましたっけ?
けれど、それでこんな唐突に依頼が終わることがあるんでしょうか?
困惑していると、珍しいがないわけじゃない、と眼帯お姉さん。
なんでも依頼の達成基準が曖昧な場合、その判断は依頼主に任されるそうです。
だから指名依頼でもこの手の依頼はできるだけ避けたほうがいいって……。
いや、それは受注する前に忠告してくださいよ! ギルドマスターでしょう!?
思わず抗議しますが、良い勉強になったろう? と笑って返す眼帯お姉さん。
むぅ……確かに良い経験でしたよ? 組織運営の仕方とか多少分かりましたし。
そう言うと、なら別に良いじゃないか、とお姉さんから一枚の紙を渡されます。
今度は何ですか? って依頼完了報告と報酬? え? これ本当ですか?
内容に驚いていると、いい友人がいるじゃないか、とニヤリと笑うお姉さん。
なんと、依頼報酬が借金の減額どころか全額免除になっていたんです!
何かの間違いかと思って読み返しますが、間違いありません……。
しかし、依頼達成時に依頼主がそれを証明するサインにふと目が止まりました。
そこに記されていたのは王都支店長のグリさんの名ではなく……。
……猫又商会会頭ブラン・ヴァイスという名前でした。
ま、まさかブランさんが……商会のトップだったなんて……。
お姉さんがニヤニヤするわけです。新米冒険者には過ぎた人脈ですよ、これ。
でも、自分の正体を明かしていいほどに信頼されているんですね、私達。
なんだか嬉しいです……ブランさん、ありがとうございます。
その後、各種手続きを終えてから教会へ戻ります。
……本当に終わったんですね、依頼。
なんだか実感が湧きません……。
明日からどうしましょう? う~ん……困りました。
今日の収支
(依頼報酬:借金の免除)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨6枚、銅貨26枚
(・・;) 皆にどう説明すれば……。
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