283日目:ちびっ子の気持ち。
神聖歴六一〇三年・
……今日も朝早くから子供たちは教会のお仕事を頑張っています。
色々な作業にもだいぶ慣れたのか無駄な動きも減ってきました……。
この数日の間にも子供たちは少しずつ確実に成長しているみたいです。
やっぱり私が心配し過ぎなんでしょうか? 信じて応援するべきなんですかね?
そんなことを考えつつ、午前中は私一人で庭のお手入れです。
箒で落ち葉を一ヶ所に集め、麻袋に入れたらゴミ捨て場へ。
終わったら年末に作った薬草園の様子を見に行きます。
そうして作業をしていると、俯いて歩く女の子が一人近付いてきます。
ぶかぶかの地味な古着を着た、まだ十歳ぐらいの黒髪の少女です。
彼女が歩くとそのたびに頭の後ろで一つに結んだ髪が左右に揺れます。
確かエマちゃんでしたっけ? 前に私が部屋の合鍵を取り上げた女の子です。
名前を呼ぶと驚いた様子で顔を上げ、私に気が付くとおろおろし始めます。
えっと……気まずいです。何か……何か話題を探さないと……。
あ、エマちゃんの右手に小さな箒が! もしかして庭掃除に来たんですか?
訊いてみると、おずおずと小さく頷くエマちゃん。
そして、エマのお仕事、だったから、と消え入りそうな声で呟きます。
それから話を聞いてみると、今朝はエマちゃんが庭掃除の当番だったとか。
けれど、昨日は寒くて夜遅くまで眠れず、寝坊してしまったそうです。
話し終えると、お姉ちゃん達に怒られる……、と俯くエマちゃん。
だ、大丈夫ですよ! 庭掃除なら私が終わらせましたから!
そう言うと安心したのかエマちゃんはその場にぺたんと座りこみます。
慌てて駆け寄ると、その瞬間ぐぅ~っとエマちゃんのお腹が鳴りました。
……あ! 寝坊したから朝ご飯を……ちょっと待ってくださいね。
彼女が朝食を食べていないことに気が付き、懐からお菓子を取り出します。
え? このお菓子ですか? ……私のおやつ、というか非常食です!
お菓子を食べ終えると元気が出たのか、ニコニコと笑いだすエマちゃん。
……そうだ、ちょうどいいのでエマちゃんにあのことを訊いてみましょう。
エマちゃんは教会のお仕事は楽しいですか? 嫌じゃありませんか?
すると最初はきょとんとして首を傾げ、次に俯き考え込むエマちゃん。
……って、私はこんな小さな子にまで何を訊いているんでしょう。
軽く自己嫌悪に陥っていると、しかしエマちゃんはポツポツと話し始めます。
「……大変なことも、あるけど、お仕事は楽しいです。
今までは働きたくても、働く場所がなかったから……。
でも、教会の中でなら、サール先生のお手伝いができます。
だから、エマたちが働けるようにしてくれて、ありがとうです」
そして、小さな頭を下げるエマちゃん。
……なんだ。やっぱり私の心配し過ぎだったみたいです。
子供たちは子供たちでサールさんを、教会をずっと守りたかったんですね。
ありがとう、エマちゃん。これで私も胸のつかえが取れた気がします……。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨2枚、銀貨44枚、銅貨26枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
(*'-'*) 子供の成長って凄いですね……。
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