282日目:私達の姿を見続けたから。
神聖歴六一〇三年・
さ、寒いです。今朝は雨のせいかまた急に冷え込みました。
けれど、この寒さにもめげず子供たちは早朝からお仕事を頑張っています。
よし、私も負けずに働きましょう。寒がっている場合ではありません。
そうして仕事をしつつ、私は昨日思ったことを皆に尋ねて回ることに。
それはこのまま子供たちを教会で働かせ続けていいのかどうか。
皆の意見を聞けば私の中で答えが出る……そんな気がしました。
というわけで、まずはノアさんを訪ねて食堂へ。
……こういう時はどうしても最初に頼ってしまいますね。
食堂に入るとノアさんは椅子に座り一人静かにお茶を飲んでいました。
私に気が付くと、一緒に飲む? と別のカップにお茶を注いでくれます。
ノアさんの隣に腰を降ろしお茶を一口。うん、暖かくて甘くて美味しいです。
暫く黙ってお茶を飲んでいると、何か悩みごと? と優しく尋ねられます。
うっ……私から質問するはずだったのに……なぜ分かったんでしょう?
すると、分かるよ仲間なんだから、と微笑みながらノアさんは呟きます。
……なんでもお見通しみたいですね。なら少し相談に乗ってください。
それからノアさんは私の話に静かに耳を傾けてくれました。
私の中でも何が正解か分からないままの感情の羅列……。
子供のためか、自分のためか話している私も段々分からなくなります。
けれど、ノアさんはそんな話を最後まで黙って聞いてくれました。
そして、話を終えるとノアさんは優しく頭を撫でてくれます。
気持ちは分かったけど私より先に伝えるべき人がいるよね、って言いながら。
……分かっています。誰よりも先にサールさんに会いに行くべきだったって。
これからもずっと子供たちと暮らし教会を守り続けるのは彼女なんですから。
けど、サールさんと話をするのが実は恐いんです。
教会を変化させたのは私なのに今更どうしてこんな話をできるんですか。
……だから先に皆と話して考えをまとめようとしていたのに。
でも、やっぱり最初からサールさんと話し合うべきですよね。
……ノアさんのお陰で目が覚めました……私、頑張ります!
夕方、全ての仕事が終わったあと、サールさんを応接室に呼びました。
そこで今感じていることを全て包み隠さずサールさんに話します。
すると、なぜかサールさんにお礼を言われてしまいました。
どうしてですか? なんで今更こんなことを言う私を怒らないんです?
サールさんだって子供たちを働かせるのは反対だったじゃないですか!
思わず声を大きくする私にサールさんは優しく微笑みます。
アナタ達の姿を見続けたから子供たちはあんなに成長できたんですと。
……私だけの力では彼らはずっと貧しいままだったでしょうと。
だから、悔やまなくても悲しまなくてもいいんですよ、と言いながら。
……サールさんのその言葉に少しだけ救われた気がしました。
けど、やっぱり私はもっと別の方法があったのではと考えてしまうんです。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨2枚、銀貨44枚、銅貨26枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
(´-`) ンー 本当にこれで良かったんでしょうか?
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