281日目:子供たちのことを考えて。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第一九日・天気:晴


 今朝も朝食を終えると、率先して教会のお仕事を始める子供たち……。

 笑顔で楽しそうに働いているんですが、その姿を見るとなぜか悲しくなります。

 確かに以前から経営再建のため子供たちを働かせる案を考えてはいました……。

 ですが、実際に働く様子をここ数日見ていると、自分の考えが揺らいできます。

 ……このままで本当に良いんでしょうか? 子供たちは幸せなんですかね?


 そうやって悶々と悩んでいると、ブランさんとマヴロさんが訪ねてきました。

 どうやら私達が留守にした数日間の経営状況を確認しに来たみたいです。

 二人の姿を見つけると、教会堂で働いていた子供たちが少しだけざわつきます。

 けれど、それも一瞬のことで再び真面目に仕事を始めるちびっ子たち……。

 皆いつもは嬉しそうに駆け寄ってくるのに……マヴロさんも少し残念そうです。

 

 その後、場所を応接室へ移しブランさんとマヴロさんに色々と報告します。

 それから一時間ほどの説明を終えると、ブランさんは満足そうに頷きます。

 順調ですね、これが続けばこの教会もどうにか立ち直るでしょうって……。

 

 ええ、数字だけ見ると予想以上の成果が出ています。それは間違いありません。

 子供たち頑張りで数日前にブランさんから指摘された問題も解消しました。

 でも、なんでしょう? このまま終わるのは何かが違う気がします……。


 しかし、その思いを上手く言葉で伝えられずに話し合いは終了しました。

 そうして帰り際、支店の方には私から伝えておきますね、とブランさん。

 ……もしかして、この指名依頼はもう完了扱いになるんでしょうか?

 けれど、それをブランさんに確認する勇気は私にはありませんでした。

 何か間違っている気がする……けれどそれを正す方法が思い付きません。

 

 それから夜になっても私は一人で悩んでいました……。

 すると部屋にミアさんが訪ねてきます。

 用件を訊くと、数日したらマーガの街に帰るにゃ~、とミアさん。

 ということは一緒に王都へ来たブランさん達も帰りますよね?

 昼間感じた通りこの指名依頼は終わりが近づいているみたいです。


 ミアさんの話を聞き表情を曇らせて俯いていると突然、額を指で弾かれます。

 思わず顔を上げ犯人のミアさんを睨むと、真剣な表情で見詰め返されました。

 ……なんですか、いきなり。痛いじゃないですか。

 少し涙目で抗議すると、何を悩んでいるにゃ? と首を傾げるミアさん。


 別に大したことではありません。ただ気持ちの整理がつかないだけです。

 そう言うと、ミアさんは優しくポンポンと頭を撫でてくれました。

 私の時もそうだったけどいつも難しく考え過ぎにゃ。気楽に行こうにゃ~って。

 もう……なんですか、それ。でも……そうなんでしょうか?


 ……私が間違いだと思っているだけなんですかね?

 分かりませんけど、ミアさんのお陰で少し気分が楽になりました。

 ……でも、あと少しだけ考えてみましょう。あと少しだけ。

 

 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨2枚、銀貨44枚、銅貨26枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (´-`) ンー 子供たちにとって一番良い選択ってなんでしょう?

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