280日目:子供たちの働く姿。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第一八日・天気:晴


 むぅ……やっぱり教会の安くて薄い毛布は寝心地が最悪でした。

 高級宿のあのふかふかベッドを思い出したあとだと余計に酷いです。

 これは子供たちのためにももう少し良質な寝具を揃える必要がありますね。

 ……決して自分の安眠のためじゃないですよ? 本当ですからね?


 寝具の改善を心に決め食堂へ向かうと、もう朝食が始まっていました。

 ……でも、今朝はなんだか普段と様子が違います。

 子供たちが皆とってもお行儀よく食事をしているんです。

 喧嘩もないし、パンや食器が宙を舞うこともありません……。

 そうして食べ終えると自ら食器を下げて足早に食堂を後にします。

 

 ……数日前からは考えられない光景です。

 昨日は子供たちの成長した姿に嬉しくなりましたけど、これは……。

 だ、大丈夫ですよね? 無理とかしていませんよね?

 う~ん……暫く慎重に様子を観察する必要があるかもしれません。


 頑張る子供たちの姿に一抹の不安を覚えつつ朝食を終えたら、教会の門へ。

 あれ? ……門を開けに来たんですがもう既に開放されています。

 子供たちでしょうか? 重い鉄製の門だから私でも開けるのは苦労するのに。

 はぁ、とりあえず教会堂へ行きましょう。お客さんも来ているはずですし。


 思わず溜め息をつき教会堂へ。

 扉を開けると、中では子供たちが聖水などを冒険者さんに勧めていました。

 皆、一生懸命に働いています……働いていますが……なぜかモヤモヤします。

 私達が手伝わなくても教会が運営できるのは良いことのはずなのに……。

 実際に子供たちが働いている姿をみるとなんだか複雑な心境になります。

 ……本当にこれで良かったんでしょうか?


 そんなことを悩みながら午前中はここ数日の帳簿を確認しました。

 今回も記入ミスはなく、収支関係も問題ありません。

 聖水の売り上げも黒字続きで、お布施も少しずつ増えています。

 猫銀銭の回収率も六割を超えていて良い感じです。

 数字だけを見ればとても順調なのに……はぁ、本当にモヤモヤします。


 というわけで、午後は気晴らしにルルちゃんと市場へお買い物に。

 少なくなった聖水や傷薬の素材も買い足す必要がありましたからね。

 香草は教会の庭でも栽培中ですが収穫までもう少し時間がかかります。


 そうそう教会を出る時、この前のちびっ子たちに声をかけたんですが……。

 お仕事が、終わってないから……と残念そうに断られてしまいました。

 ……あの子たち外で食べるお菓子をいつも楽しみにしていたのに。

 うん……やっぱりなんか今の状況は理想形とは言えない気がします。

 でも、どうすればいいんでしょう? う~ん……難しい問題です。


 まぁ、今日のところは頑張る子供たちに美味しいお土産を買って帰りましょう。

 あ、あと良い感じの寝具店も探しておかないと。

 

 ……はぁ、なんかやっぱりこの指名依頼って凄く大変です。

 物語の中だとすぐ解決するのに……現実は色々思うようにいきませんね。

 

 今日の収支

 銀貨:-1枚(お土産代)

    -20枚(香草など)

 ――――――――

 残金:金貨2枚、銀貨44枚、銅貨26枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…また悩みが増えたのです……。

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