269日目:人々の信仰心。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第七日・天気:曇/雨

 

 ふぁ……眠いです。……忙しくてここ数日睡眠不足が続いています。

 そのせいか教会の経営再建案も考えが上手くまとまりません……。

 教会の信者さんを増やす良い方法も思い浮かばず、もうダメダメです。

 ……本当、どうすればいんでしょう? ……信仰ってなんなんですかね?


 そんなことを悩みつつ今日も教会の門を開きます。

 けれど、やっぱりそこに人の姿はありません……。

 朝の礼拝に来てくれる信者さんがいればもう少し教会らしくなるのに……。

 でも、そんな敬虔な信徒さんがいたらこの教会もあれ程寂れていませんか。

 まぁ、私も信心深いほうではないので、あまり人のことは言えませんけど……。


 そうして色々考えていたら、いつの間にか時刻はお昼過ぎ。

 ここ数日の感じだと、そろそろ冒険者達が聖水などを買いに来る時間帯です。

 この中の一割でも信者になってくれればいいんですが……難しいでしょうね。

 私自身この教会を手伝っているのに軍神アーテナイを信仰してないんですから。

 ……聖水や傷薬を購入しただけで信者になるような人がいるわけがありません。

 

 とか思っていたんですが……。

 女神像の前で膝をついて礼拝していく冒険者がチラホラと……。

 中には何も購入せずに礼拝とお布施だけして帰る冒険者もいます。

 ……えっと、何が起こっているんでしょう?

 

 困惑しつつ観察を続けていると、その中に見知った顔を見つけました。

 数日前に聖水を沢山購入してくれたリーナさんです。

 そんな彼女も礼拝とお布施だけすると何も買わずに帰ろうとします……。

 あぁ、ちょっと待ってください! 話を! 話を聞かせてください!


 教会を出ようとするリーナさんを慌てて引き止め、訳を訊きます。

 すると、この前の聖水が予想以上に効いたからさぁ~、とリーナさん。

 そして、そのお礼のつもりで今日は礼拝をしに来たんだとか……。

 ……そう言われてみると他の冒険者さんもどこか見覚えがあるような?

 あれ? 色々心配しましたけど、実は上手くいっているんでしょうか?


 夕方、終わってみればかなりの額のお布施が集まりました。

 聖水や傷薬の売り上げを合計するとちょっと凄い金額です。

 なんでしょう……色々予想外過ぎて感情が追いつきません。

 喜んでいいのか悪いのか……どうすればいいんですかね?


 女神像を見上げ一人悩んでいると、不思議でしょう? と背後から声が。

 振り向くと、そこには優しく微笑むサールさんの姿がありました。

 そして、信仰なんて割りとこんなものですよ、とサールさん。

 人は神様を信じる時は信じるし、信じない時は信じない、と。

 

 でも、それでいいのよ、とサールさんは女神像を見つめます。

 誰かが助けを必要とした時、そっと支えられればそれでいい、と……。

 それが教会と人との上手な付き合い方なんだから、と。


 ……そういうものなんでしょうか?

 う~ん、やっぱり宗教ってよく分かりません。

 でも、女神像を見ていると少しだけ気分が軽くなった、そんな気がします。

 

 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨51枚、銅貨83枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 ('-'*) ……宗教って不思議です。

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