268日目:計画失敗と新たな問題点。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第六日・天気:晴


 うぅ……ダンジョン探索計画ですがノアさんから止められました。

 ちゃんと必要性を説明したんですよ? 探索理由は完璧なはずだったんです!

 それなのに、まだ早すぎるよね? って笑顔で諭されてしまいました……。

 ……でも、あの顔は計画が息抜き目的だと勘付いていた気がします。

 う~ん、なんでバレたんでしょう? 上手く隠したつもりだったのに……。

 

 というわけで残念ですが、今日も朝から教会のお仕事です。

 けど、今朝もやっぱり教会を訪れる人はいません……。

 本当にどうして信者さんが礼拝にやってこないんでしょう?

 もしかして、ここで祭っている神様に問題があるんですかね?

 

 確かここで祭っていた神様は……あ、うん。察しました。

 祭壇の上に鎮座する一体の女神像へ目を向けて全てを理解します。

 石を削って造られた見上げる程大きな女神像。

 鎧を着込み、右手に剣を掲げ、左手に盾を構る凛々しい立ち姿。


 ここで信仰している女神様……それは軍神アーテナイ。

 はぁ……この教会に礼拝へ訪れる人が皆無なわけです。

 この平和な王国で軍神、武神を信仰する一般人はそれ程多くいません。


 ……でも、原因は分かりましたがどうしましょう?

 まさか、別の神様を祭るわけにはいきませんし……。

 というか、そうしたらサールさんのお母さんが建てた教会とは別物になります。


 う~ん、あれ? でもサールさんのお母さんの時はどうしていたんでしょう?

 当時もそんなにアーテナイの信者は多くなかったはずですけど……。

 ……少し教会の記録を調べてみる必要がありますね。


 昼食後、教会のお仕事をノアさんとルルちゃんに任せて、私は物置へ。

 サールさんによると当時の記録は全てここに置いてあるんだとか……。

 はぁ、色んな物が乱雑に仕舞われた中から目当ての品を探すのは大変そうです。

 年末に片付けたはずなのに、まだこんなに残っているとは思いませんでした。

 夕方までに終わりますかね? 少しだけ不安です。


 暫く物置を漁っていると、ちびっ子たちが集まってきました。

 そうして、宝探し? 私達もやる~! と止める間もなくガサゴソし始めます。

 遊びじゃないんですけどね……でも、言って聞く子達ではないので諦めましょう。

 けど、怪我だけはしないでくださいね! サールさんに叱られるので!


 数時間後、どうにか当時の記録をガラクタの中から見つけ出しました。

 早速読んでみると……なるほど。サールさんのお母さん、なかなかやりますね。

 当時、王国の正騎士達がこの教会をよく利用していたみたいです。

 騎士が軍神や武神を信仰することは一般的にはよくありましたから。

 

 でも、この方法で信者を増やすのは今では不可能です。

 当時と違い現在、騎士達に信仰の自由はないはずですから。

 ……一般人は今でも普通に信仰の自由はあるんですけどね。

 本当、この国の王家は中央に宗教組織が寄りつくのを嫌います。


 はぁ……でもどうしましょう? これはまた徹夜で考えることになりそうです。


 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨51枚、銅貨83枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…もう本当、面倒ですこの指名依頼。

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