265日目:いよいよ明日からです!

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第三日・天気:晴


 さて、明日からいよいよ聖水などの販売を始めますよ。

 この指名依頼を受けて約一ヶ月……ようやくここまで漕ぎ着けました。

 教会の経営再建なんて無理難題に挫けず、皆が協力してくれたお陰ですね。

 まだ結果はどうなるか分かりませんけど、最後まで精一杯頑張りましょう!


 というわけで、今日は朝から明日の準備に大忙しです。

 聖水や焼き菓子の確認に、教会の掃除、商品の陳列など等……。

 あっちもこっちも仕事が多過ぎて休憩する暇さえありません。

 子供たちも手伝ってくれるんですが、逆にそれで作業が遅れることも……。

 はぁ……こんなことで当日は大丈夫なんでしょうか? 今から凄く不安です。


 そんな心配をしていると、教会の入口が俄かに騒がしくなります。

 ……この声はちびっ子たちですね。はぁ……また何か問題発生ですかね?

 少々うんざりしつつ、溜め息をつきながら急いで騒ぎの中心へ。

 するとそこには子供たちに囲まれる黒い大型犬と、その背に跨る白猫の姿が……。

 マヴロさんとブランさん!? ちびっ子たち! 二人はお客さんですよ!


 慌てて子供たちの中から助け出すと、二人とも毛がボサボサでした。

 ……いつもの綺麗な毛並みからは想像できない悲惨さです。

 けれど二人は気にしていないのか、元気な子供たちですね、と笑っています。

 意外と子供好きなんですかね? マヴロさんは尻尾も振っていますし……。

 ……でも、二人が揃って訪ねてくるとか、なにか重大な用件でしょうか?


 そうして少し不安に思いつつ応接室へ案内し、話を聞いてみると……。

 明日の激励を兼ねた陣中見舞いでした……な、なんて人騒がせな!

 ホッと胸を撫で下ろすと、私の様子を面白そうに笑うブランさん。

 むぅ……こっちは猫の手も借りたいほど忙しいのに酷いです……。

 うん? 猫なら目の前に……ブランさん、少し手伝っていきますか?


 そう冗談交じりに尋ねると、苦笑しながらやんわり断られます。

 しかし、その代わりにと一抱えほどある木箱をもらいました。

 開けてみると、中にはぎっしりと敷き詰められた猫銀銭が……。

 あまりの枚数に戸惑っていると、例のおまけに使ってください、とブランさん。

 

 むむ……手持ちの猫銀銭で適当に様子を見るつもりでしたけど、これは……。

 う~ん……なんだか上手く外堀を埋められた気がしますね……。

 ……こうなると猫銀銭の回収率などをしっかり報告しないと不味そうです。

 初日からちゃんと運用しておかないと、あとで絶対に怒られます……。

 はぁ……余分なお仕事がまた増えてしまいました……。


 その後、ブランさん達を見送り再び作業に戻ります。

 もうあまり時間もないので急がないと……。

 はぁ……もう少し余裕を持って色々始めるはずだったのに……。

 ……明日の朝までに間に合いますかね、これ?

 なんだか凄く心配になってきました……うぅ……負けるな、私!


 今日の収支

 猫銀銭:+1000枚(商品のおまけ用として)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨51枚、銅貨83枚

     猫銀銭1190枚(おまけに使う)

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…疲労と心労でどうにかなりそうです。

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