264日目:面倒な母娘。

 神聖歴六一〇三年・初春鼠はつはるねずみの月第二日・天気:晴


 うぅ……調子に乗ってここ数日でお金を使い過ぎてしまいました。

 どうしてすぐになくなるんでしょう? 新年早々金欠とかつらいです。

 未売却の素材はありますけど、あとで装備に使う予定なので売れませんし。

 はぁ……教会関係も忙しいですがギルドでお仕事を探さないといけませんね。


 というわけで、お金を稼ぐべく新年二日目から冒険者ギルドへ。

 メンバーは私とルルちゃん、そして暇そうにしていたミアさんです。

 ノアさん、ニコさん、サマラさんは教会の作業が忙しいので来ていません。

 こんな余りものみたいなパーティで大丈夫でしょうか? 少しだけ不安です。


 ギルドに到着後、黙々と依頼を探していると突然背後から抱きつかれます。

 悲鳴を飲み込み慌てて振り返ると、そこにいたのはマルガさんでした。

 うわっ、凄くお酒臭いです。この人、まさか昨日から飲み続けてるんですか?


 お酒の臭いに思わず顔を顰めると、もう仕事かい? とニヤニヤ笑うマルガさん。

 この酔っ払いめ。そうそう、お仕事ですよ~、私達は貧乏ですからねぇ~。

 面倒なので適当に返事をすると、こらこら絡むな、と呆れた様子の声が……。

 

 視線を向けると、溜め息をつきながら歩いてくるエルさんの姿が目に入ります。

 ハーフエルフの美貌に白銀の全身鎧……本当、神話の戦乙女のように綺麗です。

 そうして思わず見惚れていると、いつの間にかエルさんの顔が隣に!

 近い! 近いです! 慌てて離れると面白そうに笑われてしまいました。


 笑い終えるとクエストボードを眺め、いい仕事はあったかい? とエルさん。

 それがあまりないんですよね。報酬はいいんですが、どれも内容が……。

 なんて愚痴を溢すと、エルさんはなにを思ったか依頼書を数枚はがします。

 そして、じゃあ、少し私に付き合わないかい? って、え? ええ?

 

 困惑していると、止める間もなく受付でまとめて申請されてしまいました。

 助けを求めてマルガさんを見ますが、ニコニコと手を振るだけ……。

 コレだから酔っ払いは! ……はぁ、諦めて付き合うしかないですね。


 依頼場所へ向かう途中、エルさんにノアさんのことを尋ねられます。

 娘は元気でやってるかい? 迷惑をかけてないかい? って……。

 もしかして、それを訊くために無理やり依頼に巻き込んだんですか!?

 すると、ばつが悪そうに目を逸らすエルさん……図星ですか。

 まぁ、二人にはお世話になっているのでいいですけどね……。


 その後、ノアさんの話を聞かせるとエルさんは始終嬉しそうでした。

 そんなに心配なら思い切って話せばいいのに。面倒な母娘です。


 あ、依頼はエルさんが一人で全て終わらせてしまいました。

 私達の出番はなし……相変わらず凄かったです。

 けれど報酬は分けてくれました……ノアさんの情報料だとか。

 色んな意味で受け取り難いですが、折角なので貰っておきます。

 

 はぁ……なんだか新年最初から凄く精神的に疲れるお仕事でしたね。

 


 今日の収支

 金貨:+1枚(依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨1枚、銀貨51枚、銅貨83枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (゚-゚;)ウーン なんだかダメなお金を手にした気分です。

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