258日目:息抜きは慎重に……。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第二七日・天気:曇


 昨日はブランさんに簡単な現状報告をしたあと、そのまま別れました。

 マーガの街から王都までの数日におよぶ船旅で疲れているはずですからね。

 再会したその日に長々とお仕事の相談をするなんて無理はさせられません。

 なので、教会の詳しい話は一日ゆっくり休んだあとの明日の午後に行う予定です。

 さて、それまでに分かりやすく各資料をまとめておかないと……頑張ります!


 そう意気込みながら、とりあえず朝ご飯を食べに食堂へ。

 着いてみると、今朝の食堂はいつも以上に大騒ぎでした。

 その中心にいるのはミアさんです。なぜか子供たちに人気なんですよね、彼女。

 アレですかね……意外と精神年齢が近いんでしょうか? 同類扱い?

 あ、そんなことを考えている間に朝食が! 待ちなさい! そのパンは私のです!

 

 朝食の争奪戦を終え、部屋に戻ると再び書類と向き合います。

 けれど、一時間もしない内に集中力が切れてしまいました……。

 ここ数日は書類仕事ばかりですからね……飽きてくるのは当然です。

 ええ、私は悪くありません……。はぁ、なにか息抜きがしたいですね。


 ……よし、少しだけ、少しだけお出かけしましょう。

 部屋に籠り続けてもいい案は浮かびませんからね。

 外に出て体を動かせばなにか名案を考え付くかもしれません。

 ……今頃だと冒険者ギルドの掲示板にはどんな依頼が貼られていますかね?

 ふふっ、もう半月ほどギルドに顔を出していないので何があるか楽しみです。


 さて、そうと決めたら早く準備をしないと! 急がないと時間がなくなります。

 それに今の内に抜けだせば、ノアさんに見つかって止められることもありません。

 この時間帯ならノアさんは食堂で朝食の後片付けをしているはずですから……。


 しかし、教会を出る直前でミアさんとルルちゃんに発見されてしまいました……。

 完全武装している私の姿を怪訝そうに見つめてくる二人……。

 こ、これは上手く誤魔化さないと。一人だけ遊んでいると誤解されてしまいます。


 けれど、私の様子から何かを察したらしく、ニッコリ笑顔を浮かべるルルちゃん。

 そして微笑みながら近付いてくると、私の耳元に口を寄せてそっと囁いてきます。

 ノアさんには秘密にしておくので私たちも連れて行ってくださいって……。

 !? る、ルルちゃん……貴女いつからそんな悪い子になったんですか!?

 うぅ……仕方ありません。ミアさんとルルちゃんも連れていきましょう。


 そうしてギルドに着くと、普段以上の大賑わいでした。

 どうやら各地から年末を王都で過ごそうと冒険者が集まっているみたいです。

 そのせいで軽く終わるような依頼は全滅していました。はぁ……折角来たのに。


 結局、依頼を受注できずに教会へ戻ることに……。

 しかし、不幸は続きます。教会へ帰ると入口で笑顔のノアさんが待っていました。

 あ、これは確実に怒られます……だって目が笑っていません。

 うぅ……真面目に資料を作るべきでした。

 

 今日の収支

 特になし

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨19枚、銅貨57枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…時間の無駄遣いでした……。

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