256日目:悩める価格設定。
神聖歴六一〇二年・
ふぅ……どうにか一晩かけて原価計算が終わりました。
その結果、聖水のほうは製造した品の半数以上を売れば採算がとれる見込みです。
……半分も売るのは少々骨ですが、そこは頑張るしかありません。
まぁ、他の教会の半額以下で販売する予定なので大丈夫でしょう。
で、問題はノアさん達の焼き菓子です。
計算してみると単価が予想以上に高額でした……。
……具体的には当初予定していた価格の約二十五倍です。
思わず目が点になりましたよ……。間違いかと思い二回も再計算しました。
けれど計算結果は変わらず、予定原価の二十五倍という恐ろしいことに……。
これが普通のお菓子屋さんの商品なら妥当な価格なんですけどね……。
でも、ここは食べ物に困った貧しい人も訪れることがある教会です。
なので、そんな彼らでも手が出せる値段で売らないといけません。
というか、サールさんにそうするようにお願いされましたし……。
はぁ……正直、この極貧教会にそこまでの余裕はないんですけどね。
実際、数十人いる子供たちを食べさせるだけで資金的にギリギリですし……。
しかし、それでもサールさんは貧しい人達を助けたいみたいです。
彼らには教会しか最後は頼るところがないんだからと……。
……サールさんの気持ちも分かるんです……分かるんですけどね。
難しい問題です……てか、ただの冒険者になにを考えさせているんですか!
色々と専門外なのに! あぁ……何もかも忘れて冒険に行きたいです……。
ダンジョンとか遺跡とか満足するまで探索したいです……はぁ、面倒……。
そうして部屋で一人頭を抱えていると、サマラさんが訪ねてきました。
中に入ると、机の上に散らかったメモやお金を見て目を丸めるサマラさん。
大変そうだね……って、えぇ、もう忙し過ぎて頭がおかしくなりそうです。
思わずそう愚痴ると、困った様子で苦笑いを返されます……。
その後、部屋へ来た用件を尋ねると、教会の手続き関係についてでした。
なんでも、近日中にこのボロ教会が教会として再び認められるそうです……。
……意外と早かったですね。もう少し申請に手間取ると思っていましたけど。
これはいよいよ聖水と焼き菓子の完成を急がないといけません……。
けど、焼き菓子のほうは本当にどうしましょう?
いっそ聖水に焼き菓子の価格を上乗せして赤字分を補填しますか……。
……それでも聖水の価格は他の教会より十分安いですし。
しかし、そうすると教会の経営再建案を若干見直す必要性が出てきます。
うぅ……誰か専門家の助言が欲しいです……。
でも、猫又商会王都支店長のグリさんを頼ることはできません……。
今の状況が発覚したら問答無用で援助を打ち切られる可能性がありますから。
う~ん、もう暫く自力で頑張しかないですね……。
はぁ……今夜も寝るのが遅くなりそうです……。
とりあえず、もう一度費用を計算して削れる場所を削っていきましょう……。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨3枚、銀貨19枚、銅貨57枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
<(T◇T)>もう無理なのです! 冒険に戻りたいです!
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