255日目:商品開発の問題点。
神聖歴六一〇二年・
う~ん、よく寝ました。子供たちに襲撃されずに迎える朝は清々しいですね。
天気もここ数日降り続いていた雨が上がり雲一つない快晴。
おかげで昨日までの寒さも和らぎぽかぽかと暖かいです。
よし、朝食を食べ終えたら、今日も一日お仕事を頑張りましょう!
と、張り切っていたのに食堂へ着くと朝ご飯が終わっていました……。
あ、あれ? 私の朝食は!? いつものパンとスープはどこですか!?
入口で呆然と佇んでいると、来るのが遅いから子供たちが食べたよ、とノアさん。
そんな! ちゃんと残しておいてくださいよ! 私の朝ご飯!
思わず抗議しますが、早く起きないからでしょう、と呆れられます。
うぅ……安眠は勝ち取ったのに今度は朝食を奪われるなんて……。
……ちびっ子たちとの朝の戦いはまだもう暫く続きそうです。
ふふっ、明日は覚えてなさい、ちびっ子たち。食べ物の恨みは恐いですよ。
などと少し暗いことを考えつつ、空腹で鳴くお腹を押さえて物置小屋へ。
着いてみると、中では既にニコさんが作業を開始していました……。
普段は寝坊の常習犯なのにこういう時は早起きなんですよね、彼女。
さて、私もお仕事を始めましょう。といっても香草を細かく刻むだけですけど。
黙々と暫く手を動かしていると、ぐぅ~という音が物置小屋に響きます……。
自然と手が止まり顔を上げると、ニコさんと目が合いました。
すると無言で頷き懐から紫色の液体が入った小瓶を取り出し渡してきます。
飲めば空腹が紛れますよ、っていやいや、飲みませんよ!?
あと少し我慢すればお昼ご飯なんですから! 飲みませんってば!
そうして待ちに待ったお昼! もうお腹がペコペコです。
若干ふらつく足取りで食堂に着くと食事は既に始まっていました。
献立はパンとスープにお肉と野菜の炒め物ですが、今は凄く豪華に見えます。
では、いただきます。って、ちびっ子! 今、私のお肉を取りましたね!?
いい度胸です! さぁ、そのパンを寄越しなさい! こら逃げるな!
そんな騒がしい昼食が終わると、ノアさんが焼き菓子を配り始めます。
受け取る時に話をすると、ようやく納得のいくお菓子が完成したんだとか。
この前のでも十分美味しかったのに、まだ研究していたんですね。
……これであとは聖水だけですか。午後からさらに頑張らないと。
なんて考えながら貰った焼き菓子をパクリ。
食べた瞬間、バターの風味と優しい甘さが口いっぱいに広がります。
その後にやってくる混ぜ込まれた木の実のどこか懐かしい味。
……凄く美味しいです。
あれ? でも、これだけ美味しいと材料費はどうなっているんでしょう?
……そういえば、聖水の素材もそこそこ高価だったような?
大変です! 商品開発に集中し過ぎて原価のことを忘れていました!
もしかして売れば売るほど赤字になるんじゃ……い、急いで計算しないと!
うぅ……けど、これは冒険者のお仕事じゃありません。商人のお仕事ですよぉ。
今日の収支
特になし
――――――――
残金:金貨3枚、銀貨19枚、銅貨57枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
(ノ_-;)ハア…もっと注意しておくべきでした……。
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