254日目:ある寒い日の一日。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第二三日・天気:雨


 くしゅんッ……さ、寒いです。

 昨日から降り続く雨のせいか今朝は一段と冷えますね。

 おかげで普段より早く目が覚めてしまいました。


 朝食の時間には……まだ少しだけ早いですね。

 けど、このまま部屋にいても寒いので広間にある暖炉の前に移動しますか。

 あ、その前に食堂に寄って温かいお茶を淹れていきましょう。

 あとは火蜥蜴の外套を着込めば、朝食の支度が整うまで暖かく過ごせそうです。

 

 そんな計画を立て部屋を出ようとすると、ガチャッと勝手にドアが開きました。

 驚きで動けずにいると、ドアの向こうにいた女の子と目が合います……。

 小さな手に少し錆びた鉄製の鍵束を握り締め、きょとんとする女の子。

 そして、その後ろには毎朝、毎朝、部屋を襲撃しにくる子供たちの姿が……。

 

 なるほど……隠し通路とかではなく合鍵を使い毎回堂々と侵入していたと……。

 ふむ、これは対策をしても無駄なわけですね……。

 よし、とりあえずちびっ子、その合鍵を渡しなさい。今すぐ! 迅速に!

 

 いやいやと小さく首を横に振る女の子から鍵束を取り上げ、部屋の安全を確保。

 ふぅ……これで明日から安心して眠れそうです。

 む……なんですか、ちびっ子たち……不満そうにしても合鍵は渡しませんよ!

 

 そうして子供たちを引き連れ食堂へ行くと既に朝食が完成していました。

 ……あぁ、私の優雅な朝のぬくぬくティータイム計画が。

 少しだけ楽しみだったので残念です。

 はぁ……とりあえず朝ご飯を食べて今日の作業を始めましょうか……。


 朝食後、ニコさんと二人で物置小屋へ向かいます。

 うぅ……ここも寒いですね。なにか暖を取れるものが欲しいです。

 けど我慢です、我慢。早く聖水を完成させないといけませんからね!

 ノアさん達の作る焼き菓子だけでは教会としてどうかと思いますし。


 しかし、そう意気込んだものの作業は開始後一時間もしない内に中断します。

 いつの間にか材料の香草を全て使い切っていました……。

 これは買い出しに行かないとダメですね。予備もありませんし。


 というわけで、早速ニコさんと市場へ買い物に出たんですが……。

 なぜか子供たちが三人ほどくっついてきました。

 サールさんと廊下で話しているのを見つかったのが失敗でしたね。

 自分達も一緒に行くと駄々をこねられ断りきれませんでした……。

 はぁ……愚痴を言ってもしょうがないですね。

 早く必要な物を購入して教会へ帰りましょう。

 

 って、あれ? ニコさんはどこへ消えました? さっきまでいたのに……。

 慌てて子供たちに訊いてみますが、それぞれが別々の方向を指し示します。

 ……ちびっ子たちより先に迷子になるとか予想外過ぎますよ、ニコさん。

 これは買い物の前にまず彼女を捜さないといけませんね……。

 それじゃあ、行きますよちびっ子たち。手を繋いで逸れないでくださいね。

 あ、教会に戻ったらニコさんはお仕置きです。当然です!

 

 今日の収支

 銅貨:-6枚(子供のおやつ×3)

 銀貨:-10枚(香草など)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨19枚、銅貨57枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚

 

 (*`∧´) もう! ニコさんは自由に動き過ぎです!

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