252日目:黒い影を迎え撃て!

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第二一日・天気:晴


 ……昨日の黒い影の正体がノアさん達との話し合いで判明しました。

 あれは恐らくニコさんが目視した通りの存在。首なし騎士デュラハンです。

 ニコさんが視認できた時点で普通のゴーストじゃない気はしていましたけど……。

 まさかデュラハンだったなんて……これは割と危機的状況かもしれません。

 

 首なし騎士デュラハン……名が示す通り見た目は全身鎧姿の首のない騎士です。

 その姿からゴーストやアンデッド系の魔物と思われがちですが実際は違います。

 彼らは死して彷徨う亡者などではなくその逆、死を司る妖精の類です。

 そして狙われたら最後、魂を刈り取られるまで追われ続けるとか。


 正直あの状況で目をつけられていないとは考え難いです。追いかけられましたし。

 というか、先に手を出したのは私達のほうですからね。絶対恨みを買っています。

 もう! 本当に本当に最悪です! って、嘆いてないで急いで対策しないと……。


 というわけで、サールさんに理由を説明し私達は一旦教会から退去します。

 このままだと子供たちやサールさんを巻き込む可能性がありますからね。

 けど、まさかサマラさんとの初めての魔物討伐がデュラハンになるなんて。

 いえ、でもこれはある意味で幸運だったかもしれません……。

 サマラさんは凄腕の元神官ですからね。こういう場合はとても心強いです。


 そんなことを考えつつ、王都を出て私達はある場所を目指します。

 暫くして着いたのは王都からだいぶ離れたところを流れる川です。

 ここからだと目を凝らしても王都を囲む外壁は薄らと見えるかという程度。

 ……これだけ距離をとれば多少大規模な戦闘をしても大丈夫でしょう。

 さて、デュラハンの迎撃準備を始めますよ……。


 深夜。火蜥蜴の外套と焚火で暖を取りながら川岸でデュラハンを待ち続けます。

 うぅ……手足の先が冷たいです。川辺なので余計に寒さが堪えます。

 そうして体を縮こまらせていると、突然対岸から凄まじい金属音が!

 まるで無数の剣を地面にばら撒いたようなその音に目を向けると……現れました!

 首のない漆黒の馬に乗った首なし騎士……デュラハンです!


 しかし、デュラハンは対岸に佇みこちらへ来る気配がまるでありません……。

 ……ふふっ、やりました! 作戦成功です!

 この寒い時期にわざわざ川岸で陣を張ったのにはちゃんと意味があります。

 デュラハンの愛馬、コシュタ・バワーは水の上を渡れないんです!

 背後から襲われる可能性も多分にありましたけど賭けに勝ちました!

 さぁ、こうなったらあとは叩くだけ! ノアさん、サマラさん総攻撃です!


 数時間後、逃げ惑うデュラハンを魔術と神術で攻撃し続けどうにか倒しました。

 え? 私はアレです。敵が魔術を使い隠れたら右目で捕捉し指示を出す係りです。

 しっかり働いていたんですよ? 当り前じゃないですか。

 

 はぁ……でもこれで一安心です。明日からまた教会の経営再建に専念できます!


 今日の収支

 デュラハンの装備一式など(未鑑定)

――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨29枚、銅貨63枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (*'-'*) 流石、ノアさんとサマラさんです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る