246日目:彼女が守りたかったもの。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第一五日・天気:曇


 はぁ……結局、昨日は高級宿に泊まってしまいました。ダメって言ったのに……。

 まぁ、でもサマラさんのお陰でサールさんとの話がまとまったのには感謝ですね。

 これで今まで考えていた経営再建案を色々と試すことができますから……。

 

 ただ、サマラさんから教えられたサールさんとの会話の内容には驚きました。

 あのボロボロの教会……なんと実は本当に廃教会らしいですよ?

 なにを言っているか意味が分かりませんよね?

 話を聞いた時、私達も思わず目が点になりました……。

 

 なんでもあの教会は元々サールさんのお母さんが始めた単立教会なんだそうです。

 単立教会は特定の宗教組織に属さず、その教会のみで存在するものをさします。

 そのため本来なら母体である教団や教派から受けられる支援が一切ないんだとか。

 

 で、重要なのはここからです……。

 サマラさんによると、あの教会は八年前に閉鎖したはずなんだとか……。

 理由は教会を運営していたサールさんのお母さんが亡くなったから……。

 単立教会の場合は後継者がいないとそうなることが珍しくないそうです。


 そのことを別都市の教会で働いていたサールさんが知ったのが数年前。

 教会の状況を聞いた彼女は、急いで王都に戻り運営を再開したんだとか。

 しかし、ここで単立教会だったことが災いします……。

 

 サールさんが今まで学んできた教会運営と勝手が違い過ぎ瞬く間に資金難に……。

 近隣の教団や教派も独立したものに今更手を差し伸べてはくれなかったそうです

 けれど、そんな中で唯一支援してくれたのが猫又商会なんだとか……。

 まぁ、現在その商会のせいで教会は窮地に立たされているわけですが……。


 それでなぜあの教会が廃教会かというと、これらの複雑な経緯が影響しています。

 端的に言うと様々な要因が重なり書類上では教会は閉鎖状態のままなんだとか。

 焦って色々手続きを忘れたんだろうねぇ、とサマラさんも呆れた様子でした。

 

 なので教会を機能させるためにはまず、その手続きからする必要があるそうです。

 ……まさか、そんな状態だったなんて。サマラさんがいてくれて良かったです。

 正直その辺のことは全く知りませんからね。説明された今でも理解できません。


 でも、サールさんがあれ程頑なに私達の再建案を拒否した理由は分かりました。

 あの教会がお母さんの始めた思い出の教会だったからなんですね……。

 だから、できる限りお母さんと同じ経営方針を貫きたかったんでしょう。

 私達はそのことに気が付かず、自分達の経営再建案を押しつけるばかりでした。

 ……拒まれてしまうのは当然ですね。

 

 よし……これからは今まで以上に気合を入れて頑張らないと!

 子供たちの生活だけでなく、サールさんの思い出も守らないといけませんからね。

 あ、サマラさんには今後も協力してほしいので今晩にでも色々相談してみます。

 

 今日の収支

 銀貨:-54枚(宿泊費×5+ソシオ)(寝床☆☆、食事☆☆☆)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨37枚、銅貨83枚

     猫銀銭190枚

  借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (*'-'*) なんだか上手くいきそうな気がしてきました!

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