245日目:話し合いの結果……。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第一四日・天気:曇


 今日はサールさんを説得しに教会へ行く予定です。

 でも、まだ彼女を納得させる方法は思いついていません……。

 このままだとなにも進展がないまま無駄に一日が終わりそうです。


 そんな心配を抱きつつ教会へ。

 あ、サマラさんとは宿屋で分かれました。冒険者ギルドに用事があるんだとか。

 教会に着くと荒れ果てた庭でサールさんと子供たちが遊んでいました。

 声をかけると笑顔で駆け寄ってくる子供たち。皆この寒空の下でも元気ですね。

 彼らに手を引かれサールさんへ挨拶をすると普段と違い硬い笑みを返されます。

 

 先日の件でだいぶ関系に溝ができてしまったみたいです。

 ……でも、子供たちのためにも頑張らないと。

 彼らに楽をさせたい。その一点でサールさんと気持ちは同じです。

 それが上手く伝わるといいんですけど……。


 しかし、やはり話し合いは平行線を辿ります。

 収入源を増やすという意見はサールさんと一致しているんです。

 けれど、そこに少しでも子供たちが関わると、彼女は途端に難色を示します。


 理由を尋ねと、子供を働かせることなかれ、とか教義まで持ち出す始末……。

 全く、もう! 教義を守ってこのまま子供たちと殉教でもするつもりですか!?

 理想と現実は違います。彼らのことが大切なら教義なんて無視するべきです!

 と、最終的には感情が衝突してしまい、話し合いどころではない状況に……。

 

 そうして双方が沈黙し嫌な雰囲気が満ちた応接室のドアが突然ノックされます。

 誰でしょう? 子供たちはルルちゃんに任せたのでここへは来ないはずですが。

 困惑しながら開けてみると、ドアの向こうにいたのはなんとサマラさんでした。

 紅い布地に金糸で装飾を施した修道服に身を包み、呆れた表情を浮かべています。


 思いがけない登場に驚いていると、彼女と話をさせてもらえる? とサマラさん。

 見つめる視線の先には椅子から立ち上がり目を見開くサールさんの姿が……。

 どうしましょう? というか今、重要な話をしていてですね?

 唐突な頼みに戸惑っていると、私に任せなさい、とサマラさんは微笑みます。

 結局、そのまま押し切られサールさんとサマラさん二人だけで話をすることに。

 

 それから一時間後、廊下で待っているとサマラさんが応接室から出てきました。

 私達に気が付くと少し驚いた様子で目を瞬かせるサマラさん。

 寒いんだから別の部屋で待っていてよかったのに、って気になって無理ですよ!

 反射的に抗議すると、それもそうね、とクスクス笑われてしまいます。

 

 その後、サールさんと改めてを話すと提案したことに全て同意してくれました。

 ……え? えぇ!? サマラさん……一体なにをしたんですか!?

 話し合いのあと問い詰めると、宿に帰ったら話してあげる、と笑うサマラさん。

 今日も高級宿がいいなぁ~って、ちょっ!? 待ちなさい!

 奢ってもいいですけど、高級宿はダメです! ダメですよ!?

 

 今日の収支

 銀貨:-54枚(宿泊費×5+ソシオ)(寝床☆☆、食事☆☆☆)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨91枚、銅貨83枚

     猫銀銭190枚

  借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (゚‐゚;) ……なにがどうなっているんです?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る