238日目:あの件……?

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第七日・天気:晴


 今日は教会へは行かずに普段通りのお仕事です。

 ただ、ニコさんには借りてきた帳簿の解読を優先してもらいました。

 少しでも早く教会の経営状況を把握して対策を講じたいですからね。


 というわけで珍しく三人と一頭だけで冒険者ギルドへ。

 着いたらいつものようにクエストボードから依頼を探します。

 今回はなににしましょうか? また色々増えていて迷いますね……。

 あ……この採取依頼とか少し変わっていて面白そうです……。

 う~ん……けど、止めておきましょう……。

 ニコさんが好きそうな内容なので不在時に受注するのは可哀想です。


 色々悩んでいると、受付の眼帯お姉さんから声を掛けられます。

 うっ……またなにか面倒な依頼でしょうか?

 最近の話といえばそればかりなので少し警戒してしまいます。

 けれど、無視するわけにもいかないので渋々受付へ。

 あ、ノアさんとルルちゃんは引き続きお仕事を探してください。


 受付に行くと、そこには見るからに退屈そうな眼帯お姉さんの姿が。

 ……まさか暇だから呼んだわけじゃないでしょうね、この人。

 その態度に唖然としていると、あの件どうなった? と眼帯お姉さん。

 えっと、どの件でしょう? 最近は忙しくてなにがなにやら……。

 困惑していると、コミュニティの件だよ、と再び尋ねられます。


 そんな話もありましたね。一応もらった資料には目を通したんですよ?

 けど正直、今はコミュニティについて考えている時間がありません。

 ……コミュニティを運営できれば確かに色々便利なんですけどね。

 そう説明をすると、そっかー残念だ、と肩を落とし俯く眼帯お姉さん。

 ちょっ……なんでそんなにお姉さんが落ち込むんですか?

 あ! もしやコミュニティ限定の厄介な依頼を押しつける気だったんじゃ!?


 驚愕の結論に至り一人慌てていると、違う違う、と苦笑する眼帯お姉さん。

 あ、怪しいです。凄く怪しいです。ニコさんのお薬なみの怪しさです。

 よくよく考えたら税金対策でコミュニティ作りを勧めるとか変な話ですし……。

 ……うん、やっぱりコミュニティの件はもう暫く検討しましょう。

 焦って決めたら眼帯お姉さんに都合よく使われる気がしますからね!


 そう決心すると、頃合いを見計らったように依頼書を持ってくるノアさん達。

 眼帯お姉さんにそれを渡すと、肩を竦めながらも受け付けてくれました。

 ……どこか不満そうですけど、絶対に思い通りにはなりませんからね!?


 夕方、依頼を終えて宿へ帰るとニコさんの部屋が凄いことになっていました。

 ドアを開けた瞬間、目に入る床一面の本、本、本。足の踏み場もありません。

 その中心には黙々となにかを書き続けるニコさんの姿が……。

 忘れていました……一人にしておくと彼女はこうなるんでしたね。

 

 はぁ……食事を準備してあとで無理にでも食べさせないと。

 ……あっちもこっちも色々大変です。


 今日の収支

 銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

    +5枚(依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨5枚、銀貨16枚、銅貨83枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…ニコさん頑張り過ぎです……。

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