237日目:問題だらけの帳簿。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第六日・天気:晴


 昨日、治療院へサマラさんのお見舞いに行ったんですが……驚きました。

 もう車椅子に頼らず自分の足で歩けるほど元気になっていたんです。

 それでお見舞いのあと職員さんから話を聞くと、もうすぐ退院できるとか。

 サマラさん、退院後は冒険者に復帰するんでしょうか? 気になりますね。


 ……さて、サマラさんのことも心配ですが、今日は教会へ行かないと。

 あっちも色々不安なことが山積していますからね……本当大忙しです。

 はぁ……今月、休める日がありますかね? ミアさんが遊びにくるのに。

 いえ、弱音を吐かずに頑張りましょう。できることからコツコツとです。


 というわけで、教会に着いたら早速作業を開始します。

 今回は先日できなかった教会の経営状況を調べるのが目的です。

 なので、サールさんにお願いして帳簿などを応接室で見せてもらいます。

 ……意外と少ないですね。これだと案外早く終わるかもしれません。


 そう思ったんですが……甘かったです。

 帳簿のつけかたが滅茶苦茶でお金の動きがまるで分かりません……。

 ……私が日記の端で覚え書き程度に書いているそれより酷いです。

 頭を抱えていると、サールさんが申し訳なさそうに謝ってきます。


 なんでもこれは全てサールさんが書いているそうです。

 ただ日々の子供たちの面倒を見ることに精一杯でよく忘れるんだとか。

 うん……まずは帳簿をしっかりつけることから始めないとですね。

 けど困りました。ここから色々無駄な支出を見つける計画だったのに。


 諦めかけていると、熱心に帳簿を読むニコさんの姿が目に入りました。

 ……随分集中していますけど……ニコさん、それ分かるんですか?

 淡い期待を込めて尋ねてみると、無言で頷くニコさん……本当ですか!?

 

 詳しく訊いてみると、前後の記述などから不明部分を類推できるそうです。

 えぇ!? ……でもそれって物凄く大変なことじゃないですか?

 驚いていると、錬金術師の暗号より楽です、と平然と言うニコさん。

 ……そういえば聞いたことがあります。

 錬金術師は研究成果を盗まれないように様々な暗号を使いそれを隠すと。

 まさかその解読能力がこんなところで役立つとは思いませんでした……。


 そんなこんなで帳簿の解読はニコさんに一任することに。

 はぁ……一時はどうなることかと思いましたが、これで一安心です。

 さて、手が開いた私達は食堂へ行ってハバリーのお肉を調理しましょう。

 教会の子供たちにご馳走するために全部は売らなかったんですからね!


 夕方、食堂は子供たちの笑顔と笑い声でいっぱいになりました。

 ノアさん特製のハバリーステーキを食べてどの子も嬉しそうです。

 そうして皆口々に、冒険者さんありがとう! とお礼を言ってくれます。

 なかには、本物の冒険者だったんですね! と失礼な子もいましたけどね。


 さて、あとは帳簿の問題が解決すればバッチリです。ニコさん頼みましたよ。


 今日の収支

 銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

 ――――――――

 残金:金貨5枚、銀貨14枚、銅貨83枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (>人<) ニコさん頑張ってください。

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