233日目:無理難題と甘い餌。

 神聖歴六一〇二年・黄冬猪おうとういのししの月第二日・天気:晴


 さて、今日は猫又商会へ指名依頼について話を聞きに行きます。

 商会へ向かうのは私とノアさん。ニコさん達は普段通りお仕事です。

 ニコさんとルルちゃんの二人だけなのが若干不安ですが多分、大丈夫。

 ルルちゃんも成長した様子ですしなんとかなるでしょう。


 なんて二人を心配している間に、猫又商会に着きました。

 場所は王都東区の中心部から少し離れた第二商業地域。

 第二と冠していますが、第一商業地域となんら差はありません。

 その証拠に有名な工房や大商会など数多くがここに軒を連ねています。

 こんな凄い場所に支店があるのに、商会に加盟している武具店は一店舗。

 それだけ王都での商売は厳しいってことですかね? 商人も大変です。

 

 そんなことを考えつつ、猫の看板を掲げた石造りの建物の中へ。

 ふふっ、この手の店へ入店するのにも、もう慣れました。

 服は正装ですし、ノアさんも普段より高級なメイド服。バッチリです。

 とか思っていたのに……入店するとなぜかチラチラと視線を向けられます。

 

 一瞬、ノアさんのメイド服が珍しいのかとも思いましたが違います。

 他にもメイド服の人はいますし、見られているのは明らかに私です。

 うぅ……恥かしいです……は、早く用件を終わらせて帰りましょう。


 足早に受付へ向かうと、赤毛の猫人お姉さんが対応してくれました。

 用件を訊かれたので、例の会員カードを出し指名依頼の件を伝えます。

 するとカードを見た瞬間、目を見開く猫人お姉さん。

 そして、少々お待ち下さい、と言うなり慌てた様子で店の奥へ。


 暫く待つと、戻ってきた猫人お姉さんに店の奥の応接室へ案内されます。

 部屋の中で待っていたのは、灰色の毛並みのケット・シーさんでした。

 お名前はグリさん……なんと猫又商会王都支店の店長さんだとか……。

 これは予想以上の大物が出てきましたね……少し緊張します。


 そうして会話を始めると、今回の依頼について色々と分かってきました。

 なんでも、あの教会はもともと猫又商会で支援を続けていたんだそうです。

 ただ、近年は教会自体の経営が悪化し、援助が追いつかないんだとか。

 このままだと支援を打ち切るしかないが、それは醜聞の問題で避けたい。

 ……と、話の要点をまとめるとこんなところですか。


 で、私達でどうにかあの教会の経営を立て直してくれないかと……。

 いやいや、無理でしょう!? そもそも奉仕活動の範疇を超えてますよ!?

 笑顔で、どうにかなりませんか? じゃないですよ、このケット・シー!

 ……あまりのことに取り乱しました。でも、それだけ馬鹿げた話なんです。

 しかし、流石は支店長……グリさんはやり手でした。

 渋っていると、借金大幅に減額しますよ? ってそれは卑怯なのです!

 

 結局、可能な限り手を尽くすことになりました。

 奉仕活動って一体なんでしたっけ? はぁ……年末も忙しくなりそうです。


 今日の収支

 銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

    +1枚(ニコ班依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨2枚、銀貨72枚、銅貨83枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (ノ_-;)ハア…いいように使われている気が……。

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