229日目:寒空の下でも――。
神聖歴六一〇二年・
うぅ……昨日はサマラさんの話が気になってよく眠れませんでした……。
この治療院の地下に古い墓所があるなんて想像しただけで気味が悪いです。
でも、実際どうなんでしょう? 確かにゴーストが多い気はしますけど……。
いや、これ以上はやめましょう……人生知らないほうがいいこともあります。
べ、別に恐いわけじゃないんですからね? 本当ですよ?
サマラさんの件でゴーストにはもう慣れたんですから! へっちゃらです!
そんなことをベッドの上で考えていると、突然部屋のドアが開きます。
ヒッ!? だ、誰ですかこんな朝早くに!? まさかゴースト!?
慌てて毛布で身を隠し、隙間から様子を探ろうとすると聞える小さな溜め息。
続いて、なにをしているの? と呆れた声で尋ねられます。
この声はノアさんです! けど、今朝はまた一段と早いお見舞いですね。
一安心して毛布を脱ぐと、ノアさんは怪訝そうな顔で私を見つめてきます。
……気にしないでください。ただ少し驚いただけですから。
ゴーストだと思って隠れた? なにを言っているのか分かりませんね……。
その後、いつもより朝のお見舞いが早い理由を訊いてみると……。
なんと……なんと……今日、退院らしいですよ、私! ビックリです!
唐突なことに驚いていると、実は数日前から決まってたんだよ、とノアさん。
えぇ!? なら、なんでもっと早く教えてくれないんですか!?
すると、伝えたら絶対大人しくしていないから、と身も蓋もない答えが……。
まぁ、いいです。入院から十八日目……ついに退院です!
荷物をまとめ、退院の各種手続きや挨拶を済ませたら、いざ治療院の外へ!
そうして建物から出た瞬間、頬を撫でる冷たい風……もうすっかり冬ですねぇ。
休んでいる間にガラリと変わった季節に、少しだけ寂しさを感じてしまいます。
……なんだか入院していた分だけ一人世界から取り残されたみたいです。
珍しくそんな感傷に浸り空を見上げていると、私を呼ぶノアさん達の声が。
彼女達のほうを向くと、退院おめでとう! と暖かい笑顔を向けてくれます。
それを見た途端、嬉しさのあまり思わず目の端に涙が浮かんでしまいました。
……一人取り残されたとか酷い勘違いです。
だって、私には帰りを待ってくれていた素晴らしい仲間達がいるんですから。
夜は泊まった宿でノアさん達が盛大な退院祝いをしてくれました。
あまりの高級宿に宿泊費等の心配をしていると、大丈夫と胸を張るノアさん。
わけを訊くと、私の入院時に受け取った報酬をずっと貯めていたそうです。
出費も宿代など最低限のものにとどめていたんだとか……。
毎日の収支報告がほぼ横ばいだったのにはそんな理由があったんですね……。
……本当、私には勿体無いぐらい素晴らしい仲間達です。
ノアさん、ニコさん、ルルちゃん……これからもよろしくお願いしますね!
今日の収支
宿泊費:ノアさんのポケットマネー
――――――――
残金:金貨7枚、銀貨20枚、銅貨83枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
\(^▽^)/ 退院できて凄く嬉しいのです!
(゚ー゚*?) アレ? でも治療費はいつ払うんでしょう?
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