222日目:そんな彼女の願い事。

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第二一日・天気:曇/雨


 はぁ……昨日見つけたサマラさんに関する資料のせいで今日は朝から憂鬱です。

 あの資料には彼女の所属パーティが全滅した経緯が事細かに記されていました。

 

 五年前のある日、サマラさん達は冒険者ギルドから急ぎの仕事を請け負います。

 それは鉱山近くに巣を作ったワイバーンの討伐依頼。

 メンバーは当時Cランクだったサマラさんに加えB~Cランクが6人の計7人。

 ギルドの見解ではパーティの実力的にはなんら問題のない依頼だったそうです。

 それに、彼女達は以前にもワイバーンの討伐に成功した実績があったんだとか。


 実際、討伐も当初は順調に進んでいたようです。

 けれど討伐最終日、天候が急に悪くなってからその状況は一変します。

 大雨で鉱山を下りられず、立ち往生したところへのワイバーンの襲撃。

 その昼夜を問わぬ攻撃にメンバーは一人、また一人と力尽きたとか……。


 そして、救援が来たのはその翌日。

 付近を探索中だった別のパーティが駆け付けた時には酷い惨状だったそうです。

 それから、メンバーは治療院へ緊急搬送されることになります。

 しかし、結局助かったのはサマラさんだけ……。

 因みにその理由も推測としてですが資料に記されていました。

 

 サマラさんが一人助かったわけ、それは彼女が神官だったからではないかと……。

 つまり、死に瀕したあの瞬間、自身へ優先的に回復行為を行った可能性が高いと。

 けど、仮にこれが本当だとしても、一体誰がそれを責められるでしょうか?

 私はこれも一つのあり得る選択だと思いますけど……。

 でも、サマラさん……貴女はずっとこの時のことを後悔しているんですね……。

 

 再度読み直していた資料から顔を上げ、正面を見るとそこにはサマラさんの姿が。

 ……ちょっとだけいるような気はしていたんですよね。

 読んでいる途中から右目がチカチカし始めたので……。


 さて、それで? サマラさんの過去を知った私に、貴女はなにを願うんですか?

 そう尋ねると、彼女は涙ながらに謝り、自身の願いを口にします。

 死してなお彷徨う昔の仲間達、どうか彼らを救って欲しいと……。

 ……亡くなったパーティメンバーがゴースト化しているんですか?


 訊くと、静かに頷くサマラさん。見えないけれど感じるんだそうです。

 そうして、助けたい一心で祈っていたら、知らぬ間にレイス化していたんだとか。

 昏睡状態でも意識はあったんですね……でも、レイス化するとか凄い思いです。

 けれど、その状態でもメンバーは発見できなかったと……。

 きっと、私を怨んでいるんだよ、だから会えないんだ……とサマラさん。

 

 なるほど……だからゴーストが見える私に捜してほしいと……。

 はぁ……ここまで事情を知ったら仕方ありません。協力しましょう!

 その言葉に、ありがとう、と言い涙を流し微笑むサマラさん。

 

 ……けど、どうやって探しましょうか?

 

 今日の収支

 銀貨:-2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

    +2枚(ノアさん達の依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨7枚、銀貨20枚、銅貨23枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (・_・?) 引き受けたもののどうしましょう?

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