221日目:彼女の正体と過去。

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第二〇日・天気:晴


 朝食後、例のサマラさんの正体を調べるためベッドに図鑑を広げます。

 この図鑑は朝早くにノアさんが図書館から借りて届けてくれました。

 昨日の夕方に頼んでもう探してきてくれるとか、流石はノアさんです。


 図鑑に記されている内容はアンデッド系の魔物について。

 アンデッド……いわゆる死してなお生き続ける怪物たちの総称です。

 今まで遭遇したスケルトンやゾンビ、ゴーストの一部もここに分類されます。

 あぁ、ジャック・オー・ランタンなんかもそうですね。

 はぁ……やっぱりアンデットは厄介な魔物ばかりです……。

 

 無言で図鑑を読み進めていると、ゴーストの項目である記述が目に留まります。

 それはレイスと呼ばれる一種のゴースト的存在について書かれた部分。

 気になったのはそのレイスとゴーストとの違いです。

 

 記述によると両者の最大の違いは生き霊か死霊か……。

 つまり元になった生き物が生きているか、死んでいるかです。

 そしてレイスは生者の魂がなにかの原因でゴースト化した存在なんだとか。


 ……これはサマラさんの状況と意外に合致するかもしれません。

 昏睡状態の彼女から魂が出てゴースト化しレイスとして彷徨っている……。

 その辺のことは詳しくないですが、どこかあり得そうな感じがします。

 ……そういう伝承や昔話なんかも割と残っていますし。


 でも、仮にあれがレイス化したサマラさんだとしたら原因はなんでしょう?

 一般的に死者がゴーストとしてこの世に留まるのは未練があるからですけど……。

 レイスの場合はそういうのと違う気がするんですよね……なんとなくですが……。

 う~ん、自分は動けない状態だけど伝えたいなにかがあった……とかですかね?

 ……なにかしらの強い思いがレイス化の一因とも図鑑に書いてありますし。

 

 けど、それならサマラさんは一体なにを私へ言いたかったんでしょう?

 ……こればかりは図鑑を読んでも答えは見つかりませんし、困りました。

 今までのサマラさんとの会話を思い出してもそれらしい発言はないですし……。

 せめて彼女が入院した経緯が分かればなにか掴めるかもしれませんけど……。

 ……ふむ……ちょっとその辺を調べてみましょうか?


 というわけで昼食後、部屋を抜け出し治療院の資料室へやってきました。

 過去の治療記録等を保管したここならなにか見つかるかもしれません。

 ふふっ、マッピングが思わぬところで役に立ちましたね。


 それから数時間後、書架の隅で埃を被った資料を見つけました。

 作成されたのは五年前……サマラさんが昏睡状態になった時期と合致します!

 埃に咳き込みながら資料へ目を通していくと……ありました! 彼女の名前!


 えっと……なになに……え? これは……嘘、ですよね?

 震える手に持つ古ぼけた資料……。

 そこには冒険者だったサマラさんのパーティが彼女を残し全滅したことが記されていました……。


 今日の収支

 銀貨:-2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

    +5枚(ノアさん達の依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨7枚、銀貨20枚、銅貨23枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


<(T◇T)> 予想外の事態です!

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