218日目:見えてます!?

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第一七日・天気:晴

 

 今日も懲りずに部屋を抜け出し、午後から一人で治療院を探索しています。

 現在、地図の完成度はおおよそ四割ほど……まだまだ先は長そうです。

 はぁ……でも、実際にこうしてマッピングをやってみると大変さが分かりますね。

 ダンジョンなどの地図が高いはずです。それだけの手間暇がかかってるんですよ。


 そんなことを考えながら、地図に必要な情報を書き加えていきます。

 ……地図といってもただ単純に通路を書き記せばいいわけじゃないんですよ?

 魔物の出現率や周辺の植生、ダンジョンなら罠の有無など等……。

 私達、冒険者の使う地図には多くのことが求められます。

 現在地が確認できるというのは最低限の必須項目に過ぎません。

 

 それで今、地図に書き加えているのは各職員さんの巡回ルートです。

 これが分かれば職員さんとの遭遇率がぐっと減るはずなんですよね。

 例えるなら、ダンジョンマップにある魔物の分布図のような感じでしょうか?

 おや? この時間帯はあの職員さん達はルートが被るんですね……新発見です。


 暫く夢中で地図作りをしていると、連日同様に右目がチカチカし始めます。

 ……また、ですか。そろそろ相談した方がいいかもしれませんね、この症状。

 なんて思っていると、背後の通路からなにか妙な気配が近づいてきます。

 ……なんでしょう? この時間にここを通る職員さんはいないはずですが……。

 そんな疑問を抱きつつ、急いで物陰へ隠れます。……見つかると面倒です。


 そうして身を隠し通路の様子を窺っていると、曲り角から現れたのは……ヒッ!?

 ち、血塗れの……血塗れの男性が……う、浮いて移動しています!

 ……ま、まさかアレってゴーストですか? でも、なんで私に見えてるんです!?


 ゴーストは亡くなった人の魂がなにかの原因でこの世を彷徨う存在です。

 しかし、その姿を見ることは容易ではありません。

 マナ適正が高い人でも視認できるのは極一部に限られます。

 専用の魔道具を使っても確実に捉えられるかどうか怪しいところです。

 ただ……例外的に誰でも見られる場所が一つだけあります。

 それは高濃度にマナが溜まったダンジョン等です……。

 

 でも、ここはただの治療院。マナ濃度も普通のはずです。

 だとしたら、目の前のゴーストが見えている原因はなんでしょう?

 そう疑問に思った瞬間、ふと嫌な考えが頭をよぎります。

 最近、右目が不調だった理由ってまさか……。


 予想が外れていることを祈りながら、片手で右目を覆い隠してみると……。

 ……き、消えました……ゴーストが消えましたよ!?

 結果に驚きつつ右目から手を退かすと、再び目に飛び込んでくるゴーストの姿。

 ……これは確定ですね。なぜかゴーストが見えるようになっています!


 うぅ……最悪です。もう今日は部屋に帰って大人しくしていましょう……。

 ……治りますよね、これ?


 今日の収支

 銀貨:-2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

    +2枚(ノアさん達の依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨7枚、銀貨17枚、銅貨23枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚

 

 ε=ε=ε= 。・゚(゚ノT-T)ノ ゴーストは嫌いです!

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