216日目:治療院の噂話。

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第一五日・天気:晴


 治療院生活も今日で五日目。そろそろ退院したいですね。

 最初の説明だと入院はほんの数日という話でしたし……。

 早くノアさんやニコさん、ルルちゃんと冒険の日々に戻りたいです。

 まだまだ皆と一緒に受けたい依頼が沢山あるんですから……。


 そんなことを考えていると、あっという間にお昼時になりました。

 昼食が終われば、一日で最も退屈な時間帯がやってきます。

 朝はいいんですよ……ノアさん達が会いに来てくれるので。

 お昼は食事が終わると夕方までずっと一人ですからね……凄く暇です。


 というわけで、今日も懲りずに治療院を探検します。

 ふふっ、大丈夫です。見つからなければ問題ありません。

 昨日は少しだけ運が悪かったんですよ……。

 慎重にマッピングすれば今度こそ上手くいきます……。

 ……ダンジョンだと思えば難しいことはありません。


 そうして昨日と同じように部屋を抜け出し真っ白な廊下へ。

 暫く歩いていると、地図作りで酷使したせいかまた右目がチカチカし始めます。

 ……なんで右目だけこうなるんでしょう? 目薬とかもらえば治りますかね?

 とか思っていると、今日も散歩? と昨日と同様に背後から声をかけられます。

 ……もう驚きませんよ。だってこれで三回目です。

 振り返ると、そこにはやっぱりサマラさんが佇んでいました。

 でも、どうしてこの人はいつも気配を消して背後から話しかけてくるんでしょう?

 ……まぁ、別にいいんですけどね、慣れましたし。


 それから数時間、サマラさんとお喋りをして夕方まで過ごしました。

 サマラさんはこの治療院のこと、私は今までの冒険のことなど話題は尽きません。

 そんな話の中で私の興味を一番惹いたのはここが迷いやすい理由です。

 

 なんでも、この治療院のどこかに『開かずの扉』があるんだとか……。

 そして、その扉を隠すためにここはとても複雑な構造になっているんだそうです。

 ……本当ですか? でも本当なら扉の向こうになにがあるか気になりますね。

 そう言って笑うと、そうだねぇ、気になるねぇ、と笑い返すサマラさん。

 ……でも、その笑顔がなぜか沈んで見えたのはどうしてでしょう?


 サマラさんとの会話を終え、部屋に戻ったのは夕食少し前。

 ふふふっ、今回は迷わず自力で帰還できましたよ!

 職員さんにも見つからずに済んでバッチリです!

 しかし、喜んだのも束の間、例の地図がお見舞いに来たノアさんにバレました。

 また言い付けを守らずに抜け出したんだね? ってノアさん……顔が恐いです!


 その後、必死の弁解も効果はなく、こっぴどく叱られてしまいました……。

 うぅ……なにも職員さんまで呼んで一緒に怒ることないじゃないですか……。

 ……あんまりです。でも、『開かずの扉』……気になりますねぇ。

 一体なにがあるんでしょう? ……冒険者の血が騒いでしまいます。

 

 今日の収支

 銀貨:-2枚(宿泊費×3+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

     +2枚(ノアさん達の依頼報酬)

 ――――――――

 残金:金貨7枚、銀貨15枚、銅貨23枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 ((o(> <)o)) 気になります! 気になります!

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