212日目:気が付くとそこは……。

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第一一日・天気:晴


 気が付くと私はベッドで横になっていました……なにがあったんでしたっけ?

 なんだか頭がぼんやりとします……というか、どこですか、ここは?

 床や壁、天井も真っ白な場所とか……物もこのベッド以外ありませんし……。

 

 そこでハッと我に返ります……そうだラミア! ルルちゃん! 皆!

 慌てて起き上がろうとして全身に走る激痛……ッでも我慢、我慢です!

 こんな痛みぐらいなんですか……皆を、皆を探さないと……!

 悲鳴を上げる筋肉、軋む骨、火花の散る視界……それでも動け、私!

 

 そうしてようやく体が少し動いた瞬間、そっと誰かに抱きしめられました。

 霞む目で確認すると……え? あれ? ノアさん? 無事だったんですか?

 しかし、彼女の姿を目にした途端、安心からか急速に意識が遠退き始めます……。


 次に目を覚ました時も私はベッド上にいました……。

 ただ部屋は先程と違い、宿の一室のような場所に変わっています。

 近くの窓から見えるのは丸い月の浮かぶ夜空……。

 現状を確かめていると、おはよう、と優しい声が聞こえてきます。

 声の主は少し離れたところに座っているノアさんでした。

 そんな彼女へ私はおずおずと尋ねます……あのあとどうなったのかを。

 するとノアさんは、皆無事だよ、と小さく笑い詳細を話してくれました。


 まず、私が黒竜の小剣から放った渾身の雷撃はラミアへ直撃したそうです。

 けれど相手は神話の怪物。それでも倒れることはなかったんだとか……。

 ただ傷は深かったのか、あの一撃のあとすぐにラミアは退いたらしいです。

 ……恐ろしい生命力ですね……二度と遭遇したくありません。


 で、ラミアが逃げたあとが大変だった、と大きな溜め息をつくノアさん。

 そして、その原因は怪我をしたリンセさんやルルちゃんではなく……私でした。

 なんでも、前回以上に私の体からマナが喪失していたんだそうです……。

 そのため、あの場では治療できず急いで王都へ戻るしかない状況だったとか。

 でも、あそこから王都まではどんなに早くても半日以上かかります……。

 なので、正直助かるかどうかギリギリの時間だったらしいです……。

 本当よく生きて帰ってこれました私……皆に感謝しないといけません。


 ただ、治療は間に合ったもののやはり無傷とはいかなかったそうです。

 そうして、どこか気の毒そうに手鏡を渡してくるノアさん。

 覗いてみると自分の顔に大きな変化がありました……。

 髪の全てが白く変色し、蒼かった眼も右が銀色になっています……。


 ノアさんによると過度にマナを使うと稀に起こる現象なんだとか……。

 ……そう、ですか。でも、これぐらいなら安い代償です。

 あのラミアと戦って皆、無事に帰ってこられたんですから……。

 そう言って笑うと、ノアさんも同意するように微笑んでくれました。

 はぁ……安心したらなんだか眠くなってきましたね……。

 ノアさん、私もう少しだけ寝ますね……おやすみ……なさい……。

 

 今日の収支

 (特になし)

 ――――――――

 残金:金貨3枚、銀貨18枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨12枚、銀貨86枚


 (_ _;)…パタリ 疲れ果てたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る