211日目:神話の怪物。
神聖歴六一〇二年・
昨日からリンセさんの足跡を辿り、シュランゲ遺跡ダンジョンを移動中です。
足取りを地図で確認するとやはり例の広場を目指しているように思えます。
この状況だと足跡を見失った場合でも広場の確認はしたほうがよさそうですね。
それから罠に用心しつつ進むこと数時間、ようやく広場の入口に到着しました。
足跡はここまで途切れず続いていたのでリンセさんは絶対にいるはずです。
入口から中の様子を窺うと、広場は所々に岩が配置された円形状……。
警戒しながら周囲の観察を続けていると、あっ! と声を上げるルルちゃん。
彼女の指差すほうへ視線を向けると岩陰から微かに見える人の腕。
……リンセさんでしょうか? ……でも別の誰かの可能性もあります。
この広場自体あまりいい印象を受けませんし、もう少し様子を見たほうが……。
しかし、このちょっとの迷いがいけませんでした……。
その隙に、リンセさん! と声を上ながら無警戒に岩陰へ駆け出すルルちゃん。
止めようと慌てて手を伸ばしますが間に合いません……。
次の瞬間、別の岩陰から現れたなにかに吹き飛ばされ宙を舞うルルちゃん。
そして、そのまま受け身をとることもなく地面を転がり動かなくなります……。
……ほんの一瞬の出来事に呆然としていると、岩陰から悠然と姿を現す元凶。
それは美しい女性でした。白く透き通る肌。金糸のように輝く滑らかな長い髪。
母性を象徴するような体。……性別を問わず誰もが目を奪われる絶世の美女。
……けれどその下半身に続くのは脚ではなく、黒光りする鱗……大蛇の体躯。
――その正体は半身半蛇の魔物・ラミア。
まさか、こんな大物に出会うとは思いませんでした……まさに想定の範囲外。
ラミアは一部の神話にも記述があるほど強力な魔物です……。
私達が相手にできるわけ……いえ、ダメですね。逃げては……いけません。
仲間を、ルルちゃんを見捨てるぐらいならここで全滅したほうがマシです!
そう決心して震える手で剣を抜くと、ノアさん達も力強く頷いてくれます。
いざ、打倒せん神話の怪物! 私達は生きて無事に帰るんです!
そうして始まった戦いは熾烈にして苛烈を極めました。
今までの経験したどんな戦闘よりも死を隣に感じます。
一歩足を踏み出すたび、次の瞬間には命が消えているかもしれない恐怖。
剣を振るたびに襲いかかってくるそれ以上の明確な殺意……。
諦めたい、逃げ出したい、いっそ死んで楽になりたい……。
それでも私は、私達は剣を振るいます。
この背には守るべき仲間がいる……信じてその背を託してくれた友がいる。
だから私は諦めない! それを裏切るなんてことができるわけがない!
そんな想いとともに黒竜の小剣を握る手に力を込めます。
ここでやらなければ意味がない……私の全てを懸けてもいい。
だから……だから全力を貸してください!
そう叫びながら振るった小剣から迸る雷撃はまるで雷を纏う巨竜のようで……。
あぁ、きっとアレなら……そう安心した瞬間――、
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:金貨3枚、銀貨18枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
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