207日目:耳を疑う指名依頼。
神聖歴六一〇二年・
ふふふっ……宿の女将さんに料理を教わるため食堂を手伝い始めて数日。
ついに調理を任されましたよ! 目玉焼きとゆで卵を作ってほしいそうです!
修業の成果を見せる時がきました! 頑張ります!
……宿のお仕事が終わったので、冒険者ギルドへ向かいます。
え? 目玉焼きとゆで卵? な、なんの話ですか? 分かりませんね。
……決して失敗したわけではないのです……本当ですよ?
うん、この話題はもう終わりです。気持ちを切り替えて依頼を探しますよ!
しかし、掲示板へ向かう前に受付の眼帯お姉さんに呼び止められました。
……昨日と同じような笑顔ですね。うん、あの表情なら多分安全な気がします。
でも、なんの用事ですかね? あ、またお手紙が届いとか?
ふふっ、今度は誰からのお手紙でしょう? 少しワクワクします。
けれど、そんな根拠のない期待は受付に着いた瞬間、粉々に打ち砕かれます。
眼帯お姉さんに渡された一枚の紙……見覚えのあるそれは指名依頼の依頼書。
しかも、依頼主が冒険者ギルドとか絶対面倒な案件に違いありません……。
それでも断る選択肢はないんですけどね……指名依頼の厄介なところです。
はぁ……仕方ありません。とりあえず依頼内容について話を聞いてみましょう。
…………………………ハッ!? あまりのことに頭が真っ白になっていました。
それほど衝撃的な話だったんです。ルルちゃんとか今にも泣き出しそうですし。
えっと……今回のお仕事はダンジョンで行方不明になった冒険者の捜索任務です。
そして、捜索対象者はトーポさんとリンセさんの二人……正直耳を疑いました。
だって彼らはルルちゃんと同じEランク……ダンジョン探索は無理なはずです。
それについて尋ねると、厳しい表情を浮かべ詳細を教えてくれる眼帯お姉さん。
なんでもトーポさん達、衛兵の目を盗んでダンジョンへ忍び込んだらしいです。
……なんて無茶を……そこまで追い詰められていたんですね、トーポさん達。
でも待てください。……きつい言い方になりますが結局は自業自得です。
なのに、どうしてギルドが指名依頼まで出して捜索するんですか?
そう訊くと、眼帯お姉さんは一枚の姿絵を私達の目の前に広げました。
描かれていたのは豪華な緑色のドレスに身を包んだ赤い髪の綺麗な女性です。
こちらを見つめる切れ長の紅い瞳も印象的ですね……って、まさかこの人!?
頬を引き攣らせながらお姉さんに視線を向けると、重々しく頷かれます。
やっぱり……この女性はリンセさんですよ……。
見たところ上流階級のご息女みたいですが、捜索願とかは……?
恐る恐る確認すると、出てる……、と項垂れる眼帯お姉さん。
うわぁ……これは下手すれば大問題ですよ……。
なんでこんな厄介な依頼を零細パーティに回すんですか……最悪です。
……成功したら報酬をたっぷり貰わないと。
今日の収支
銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)
金貨:-1枚(各種道具等)
――――――――
残金:金貨3枚、銀貨18枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨12枚、銀貨86枚
(ノ_-;)ハア…指名依頼は本当、面倒です。
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