203日目:ついに私にも……!

 神聖歴六一〇二年・神楽狗かぐらいぬの月第二日・天気:晴


 昨日、依頼のあとノアさんと再度検証した結果……鞘の能力が判明しましたよ!

 あの鞘には、どうやら周囲のマナを吸収し貯め込む力があるみたいです。

 そして、小剣はその鞘が集めたマナを使用し紫電を放っていたと考えられます。

 あの森で私がマナ喪失状態に陥ったのは、鞘のマナ残量低下が原因みたいです。

 鞘へのマナ供給……その問題が解決すれば小剣を安全に使用できるんですが……。


 ただ、これが一番の難題なんですよね……私自身がマナを供給できないので。

 マナ結晶の利用も考えましたが……凄く高いんですよね、アレって。

 それに多分必要になるマナ結晶は大粒で高品質な物です。とても手が出ません。

 あ、こう考えるのにはちゃんとした理由があります。


 小剣がまだ短剣だった時……短剣の鞘は紫電を放つと壊れてしまいました。

 ……原因は恐らく鞘に残っていたマナを完全に喪失したからです。

 例えマナの利用が想定外でも鞘は黒竜の鱗で作られた最高級品でした。

 残存していたマナは一般的な魔物素材の比ではなかったはずです……。

 その鞘が耐えられなかったのに、普通のマナ結晶がもつわけがありません。

 でも、最高級マナ結晶を買うほどのお金なんてどこにも……。

 

 う~ん、困りました。結局、小剣の使用は現実的ではないんでしょうか?

 ゴブリン・メイジのような敵が普段からいればなんとかなりますかね?

 ……いえ、無理ですね。魔術を使う魔物の相手とかリスクが大きいです。

 それにもう一度同じ状況になっても再現できる気がしません。


 うん? あれ? でも……ここピンッと閃きましたよ、私!

 敵の魔術に干渉してマナを利用可能ならノアさんのマナも使えませんかね?

 以前、ノアさんは森のドリアードにマナを渡していましたし。

 ……これは意外と上手くいくかもしれません。


 部屋を訪ねノアさんへそのことを相談すると、ハッとした様子で驚かれます。

 というわけで、ノアさんに黒竜の小剣へマナを流してもらうことに……。

 あ、ノアさんになら黒竜の小剣は触られても別に大丈夫なようでした。

 ただ、どれだけ力を加えても小剣は決して鞘から抜けませんでしたけど……。


 そうしてノアさんが暫くマナを流し続けると、白竜の鞘が蒼白く輝きだします。

 ……こ、これはもしかして成功しましたか!?

 ノアさんへ確認するように顔を向けると、微笑みながら頷いてくれます。

 やった! やりました! ノアさん、ありがとう!

 思わず抱きつくと、ノアさんは優しく頭を撫でてくれました。


 ふ、ふふっ。これで黒竜の小剣が使い放題です!

 ……紫電を纏う竜の宝剣……まるでお伽噺の主人公みたいでワクワクします。

 私にも新しい二つ名がついたりして……。

 あ、でも……結局「雷光のナメークハンター」とか呼ばれそうで怖いですね。

 よし……やっぱり滅多なことでは使わないようにしましょう。

 ……変に目立ってはいけません。


 今日の収支

 銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

 ――――――――

 残金:金貨5枚、銀貨57枚、銅貨53枚

     猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚


 (*'-'*) 私にもついに必殺の切り札が!

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