197日目:火蜥蜴の外套と鞭。

 神聖歴六一〇二年・時雨鶏しぐれどりの月第二七日・天気:晴


 うぅ……頭痛い。お水欲しい……昨日は流石に飲み過ぎました。

 ……調子に乗って部屋にまでお酒を持ち込んだのが失敗でしたね。

 お陰で変な夢まで見てしまって……アレは本当になんだったんでしょう?

 夢の中で小さな白竜と黒竜が笑いながらお酒を酌み交わしてるんですよ?

 不思議過ぎて起きた今でもはっきりと夢の内容を憶えています。


 ……あれ? そういえば黒竜の小剣はどこへ置きましたっけ?

 いつもの置く場所にない小剣を探して部屋を見回すと……ありました。

 でも、なんですかこの状況? 空の酒瓶の中に埋まってるとか……。

 

 それを慎重に引っ張り出してみると……うわぁ、凄くお酒臭いです。

 ……あの夢の原因はまさかこれなんじゃ。

 あれ? ということは実は白竜と黒竜って意外と仲良しさんなのでしょうか?

 ルイナさんの話だと縄張り争いをしていて仲が悪いイメージでしたけど……。

 もしかしたら本当は喧嘩友達とかそんな感じだったのかもしれませんね。

 

 さて、色々不思議な点はありますけど、急いで酒瓶の山を片付けないと……。

 あ、あと小剣もお手入れもしないといけません。酒臭い小剣とか最悪ですから。

 うぅ……完全に自業自得ですが朝から大忙しです。

 お掃除の後は遅めの朝食をとり、ルイナさんとお別れして武具店へ向かいます。

 運搬任務前に注文していた火蜥蜴の外套と鞭が完成しているはずですからね。


 お店へ行くと筋骨隆々のちょび髭おじ様が普段通り店先の掃除をしていました。

 挨拶をすると、まだ生きてたか! と嬉しそうに笑うちょび髭おじ様。

 言葉はアレですけど声音と表情から色んな思いが感じ取れます……。

 実際、注文をしたのに受け取りにこない、これない冒険者は大勢いますからね。

 だから支払いは前払いが基本ですし、今回もそうでした。

 ……ちょび髭おじ様は今まで何人の帰らぬ冒険者を見てきたんでしょうね。

 

 ……ダメですね。あの日以来、思考が少し暗くなってます。前向きにいかないと。

 よし……さぁ、おじ様! 注文の品を見せてください! 完成してますよね?

 そう訊くと、応ともッ! とおじ様は店の奥から外套と鞭を運んできてくれます。

 受け取った外套は機能的でシンプルなモノでした。色は外が黒で内が赤色。

 目立つことを抑えつつ内側はお洒落に……この辺に職人の遊び心を感じますね。

 

 鞭の方もしっかりと手に馴染むように作られていて文句なしです。

 色は黒と白の縞々模様……おじ様曰くこの模様に仕掛けがあるんだとか。

 詳しく聞くと、縞々模様の効果で相手は間合いが掴み難くなるらしいです。

 ……本当ですか、それ? 今度じっくり検証してみないと……。


 でも、どれも凄くいい品々です。おじ様に頼んでやっぱり大正解でしたね!

 さてと、あとは多めに作った外套をミアさんへ送らないと。

 今の時期、海の上は寒いはずですからね、きっと喜んでくれます!


 今日の収支

 銀貨:-3枚(宿泊費×4+ソシオ)(寝床◎、食事◎)

     -1枚(外套配達料)

 ――――――――

 残金:金貨5枚、銀貨60枚、銅貨53枚

    猫銀銭190枚

 借金残高:金貨17枚、銀貨76枚

 

 ('-'*) これで寒さもなんとかなりそうです。

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