194日目:気難しくて頑固なヤツ。
神聖歴六一〇二年・
困りました。非常に困りました。早く王都へ帰りたいのに……。
現在、私達はドラゴン観測所で足止めされています……一体なんでこんなことに。
昨日、あのあと無事にドラゴン観測所へ到着したまでは良かったんですよ?
ただ問題はそこからです……。
本来、私達は物資を引き渡したらそのまま帰る予定になっていました。
けれど、観測所の職員さん達が一日だけでも泊まってくれと懇願してくるんです。
その理由は形が小剣へと変化してしまった黒竜の短剣にありました……。
どうやらあの一件を目撃していたらしく、非常に珍しい現象だから調べたいと。
それで私も小剣の状況は気になっていたので翌朝までなら、と了解したんです。
……でも、それがいけませんでした。
時刻はもうすぐお昼過ぎ……なのに小剣は返却される様子がありません。
悶々とした気持ちで待っていると、ようやく職員さんが挨拶にきました。
調査に手間取ってしまいまして、と平身低頭の職員さん。
……ならもう少し早く連絡とかくれても……いえ、止めましょう。
ここで文句を言ってこれ以上時間を無駄にしたくありません。
そういう訳で、詳細な説明を受けるために研究室へ移動します。
案内されたのは観測所の地下に設けられた一室でした。
中には魔術や錬金術関係の機材や書物が乱雑に置かれています。
あ、ニコさん! 勝手に触れたらダメです! 壊れますよ!?
そうやって各種機材に注意して進むと、部屋の中心にそれはありました。
床に描かれた幾重にも重なる魔術陣……その中央の台座に置かれた小剣。
えっと、これでは調査というより封印のような? ……術符も貼ってますし。
状況に困惑しつつ職員さんへ目を向けると、思いっきり頭を下げられす。
すみません、もう少し時間をください! ってどういうことですか?
返答に困りつつ話を聞いてみると意外なことが起こっていました。
なんでも、調査のために触れようとすると紫電を纏い周囲を威嚇するんだとか。
だから、今は魔術陣と術符で抑えているんです、と職員さん……。
なるほど、それでもう少し時間をかけて調査したいと……でもダメです。
私はそう言うと、職員さんが止めるのも聞かずに小剣へ近付きます。
すると小剣は自ら術符を引き剥がしスーッと宙へ浮き、私の腕の中へ……。
唖然として言葉を失う職員さん。うん、私もちょっと驚いています。
でも、これで分かりました。この剣、私以外には触れられたくないみたいです。
前から気難しい剣でしたが、いよいよ頑固になってきましたねぇ……。
はぁ……仕方ありません。この剣については今後自分で調べるしかないですね。
そう思っていると、今の状態なら調査可能です! と駆け寄ってくる職員さん。
是非もう一日だけ時間を! と言われても……あ、そうだなら一つお願いが!
その後、とある条件で明日まで観測所に滞在することになりました。
ふふっ、アレが利用できれば王都へはすぐに帰れますからね……。
今日の収支
(特になし)
――――――――
残金:金貨1枚、銀貨50枚、銅貨53枚
猫銀銭190枚
借金残高:金貨17枚、銀貨76枚
('-'*) 明日が楽しみです♪
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